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夢主side
「あー海来んの久しぶり」
「ホリデーは帰らなかったですもんね」
「おかげで小エビちゃんと過ごせたからラッキーだったかも?」
「ふふっ、強かですね」
「小エビちゃんのが強かだよ」
週末、フロイドとAの2人でカレッジから1番近い海にやって来ていた。
闇の鏡は学園長からの許可を貰うことを前提に、許可範囲までなら基本どこでも行ける。しかし許可範囲に海がなく、学園長から長期休暇でもなければ許可出来ないと言われてしまった。
まあ普通の生徒ならそこで断念するところだが、生憎ヴィランとその恋人。フロイドは普段の言動から一般生徒とは違うのは分かるが、AもAでそんなフロイドを好きになる人間だ。わりとまともではない。よって2人は学園長にお話という名の脅迫をした。
フロイドはまぁ893バリに学園長を揺すった。しかし学園長を務めるだけあり、ちょっと青ざめるだけで許可を出さなかった。
しかしそれをAが許さなかった。普段口答えをしない生徒であっただけに動揺したのだろう。
Aは、それは雄弁にいかに自分が被害者であるかを語った。
学園側の落ち度で勝手に学園に連れてこられ、いつ狙われるか分からない男だらけの学園に放たれ、挙句複数の他寮のオーバーブロット事件を解決されられ疲労困憊。さらには弱り目に祟り目。おかしな生徒から命を狙われる始末、そんな中やっと見つけた心の拠り所である恋人とのデートを邪魔するのかと。
でも許可範囲外なら仕方ない、ただ海に行くだけでも危ないと言うなら仕方ない、一緒に行く相手が信頼のおける人魚でも危険だと言うなら仕方ない。
と、少々胡散臭いところもあったが、学園長には大ダメージ、腐っても良心が痛むらしく制限を設けての許可をもぎ取った。
「オレねぇ、小エビちゃんがコイビトって言ってくれて嬉しかったんだ」
「ちょっと恥ずかしいかったんですよ」
「え〜めっちゃ好きなんだけど」
砂浜の手前まで来ると目の前でフロイドしゃがむ。どうしたかと尋ねるとフロイドは軽く振り返りへにゃりと笑った。
「砂浜じゃ松葉杖使えないしょ?おぶったげる」
「ほんとに至れり尽くせりですね、対価とかあったりします?」
「んーあるよぉ」
「あはは、やっぱり」
フロイドが自身の腰をぽんぽんと叩いて急かすので、松葉杖をその場に置いてフロイドにそっと跨る。フロイドがAを押さえて立ち上がると、負担がかからないようにゆるゆると歩き出す。少しの振動が心地よかった。
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作者名:病み病みスリッパ | 作成日時:2020年6月25日 18時