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夢主side
端に転がっていた大きめのダンボールの後ろに隠れていると、足音は段々と大きくなりやがて自身の近くで鳴りやんだ。
「Aさん、早く出て来てよ。あまり手荒な事はしたくないんだよね」
ウッズの声が嫌に響く。口調こそ苛立って聞こえるが声に怒りを感じさせない、遊んでいるのだろう。
声を押し殺して限界まで体を縮こませる。静寂の中では心臓の音さえも煩い。
「…Aさん僕はね、君の髪に惚れたんだ。でも気付けば君の容姿までもが僕を惹き付けて離さない！だから僕のものにしてあげようと思ったんだ。そうすれば君は永遠に美しいままで居られる、そしたら君も幸せだろ？素晴らしいと思わないか！さぁ、僕の
話終わると同時にマジカルペン使用時にでる特有の空気を吸い込む様な音がして、隠れていたダンボールの陰から飛び出る。大きな音と爆風がした方を見ると元いた場所は吹き飛び、火花がチリチリと揺れていた。
「やっと出てきてくれたね」
「私の容姿に惚れたのでは無かったんですか？あれでは私ごと壊れてしまいます」
「うんうん、大丈夫身体は修復出来るから、邪魔な中身が消えるだけ、安心して当たっていいよ」
初めの一撃を合図に次々に攻撃魔法が飛んでくる。狭い空間の中、何とか体を翻して避けていく。体力はある方だが、ペンを振る動作しかしない相手にいつまでも持たない。
何とか隙を見つけようと目を見張る。と、集中すれば見えてくるものだ、魔法を繰り出す時一瞬の隙があるのに気が付く。攻撃を避けながらバレないよう慎重にウッズまでの距離を詰める。
「ははは！意外だ！か弱そうなのに案外動けるものだね！」
一か八かかけるしかない。ギリギリまで距離を詰めたあとブレザーの下に隠していたメリケンサックに指を通してウッズに向かって走り出した。
「！、気でも触れたのかい？まぁ倒れるのも時間の問題だからね！」
「そうね」
今まで返事をしなかったのに急に返事をした事に面食らったのか隙が大きくなったウッズの懐へ入り込み、メリケンサックを固く握り締めた拳を鳩尾へ叩きつけた。相手よりも体格が劣っている時、相手の不意を付いて間合いに入り込むのは有効な手だ。
「ぁ"がっ！」
人間の急所である鳩尾を女と言えど思い切り殴りこまれたのだから平気でいられる筈がない。倒れるウッズを避けて、急いでその場から離れ、荒れまくった呼吸を整える。
ヒューヒューと鳴る喉がもう動けない事を知らせた。
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作者名：病み病みスリッパ | 作成日時：2020年6月25日 18時
