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志麻side



エレベーターで上ること数分。
40階で下りて、そこから階段を上って辿り着いた屋上。

少し強く吹き付ける風を受けながら、俺は街を見下ろして立っていた。


彼女に、愛してると伝えた。

彼女に、俺の願いも届けた。



最後に残った、俺のすべきこと。



落下防止用の手すりを、ぐっと力を込めて握った。




「しーま君。何してはるんですか?」


その時、後ろから声が聞こえて思わず振り返る。

そこに居たのは、金髪でアシンメトリーな髪型をした、男性にも関わらず綺麗という言葉が酷く似合う男。

優しげな口調と反して、笑っているにも関わらず鋭く刺すような瞳に少しぞくりとした何かが俺の背筋を駆けた。



「…ただ、風に当たっていただけですよ」


「へぇ。あ、そうや。ところでAちゃんにお花は渡せたんですか?」



Aという言葉に、身体が無意識にぴくりと反応した。
そして、同時に彼は俺が忘れてしまっている人なのだとわかる。
その事に対する申し訳無さで目を伏せた。



「…その、ごめん」


「…やっぱり、俺達は忘れても彼女の事は覚えてるんやね。…少し、悔しいなぁ」



ちらりと彼を見ると、茶化すような声色にも関わらずその顔は悲痛を浮かべていた。
揺れた彼の右耳のピアスが太陽で反射してキラリと輝き俺の目を刺す。





あぁ、これはまずい。時間が無い。
一瞬、どうしてここに居るんだっけ?と思った頭をぶんぶんと横に振り、罪悪感はあるものの彼に言い放つ。



「…すまん、一人にしてくれへんか」


「嫌です」



即答された。

何で、と言おうとした時、彼が俺との距離を一気に詰めて俺の腕を痛いくらいに強く握る。

唐突な痛みに顔を歪め、背の高い彼を見上げると、彼は落ち着いているのにドスの利いた声で言う。





「だって一人にしたらあんた、飛び降りるでしょ?」





「っ…離、せっ!!」


俺は必死に彼の手を振り解こうと藻掻くが、背の高いこいつはそれを許さない。



正直に言うと、図星を突かれていた。

俺は、Aを忘れたくなくて。愛していたくて。
ずっと忘れない為に、愛している為に。





Aを忘れる前に、死のうとした。





身勝手かもしれない。
きっと俺が死んだら彼女はとても悲しむだろう。




でも。俺の最後のわがままを聞いてくれよ。

俺は、お前を。お前だけは___





ガチャリ。

重たい扉が開く音がした。
その音がした場所に立っていた人を見て、俺は顔の色を絶望に染めた。

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ちょこ - とてもよかったです!その後話がもっと欲しい! (2019年10月8日 11時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
とあわ - 控えめに言って最高 (2019年5月18日 23時) (レス) id: b018cf85ec (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - Tileさん» 感動していただけたなら何よりです!こちらこそ、コメントありがとうございます! (2019年5月6日 16時) (レス) id: 188fe56108 (このIDを非表示/違反報告)
Tile(プロフ) - ガチ泣きしました……すごく面白かったです!!めちゃめちゃ感動でした。感動するお話大好きです!ありがとうごさまいました! (2019年5月6日 12時) (レス) id: 3d55051bee (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 関西風しらすぅ@坂田家さん» そんなに泣いていただけるとは…!こちらこそありがとうございます。目は擦ったら後に響きますので、優しく涙を拭き取って下さいね、コメントありがとうございました! (2019年5月5日 3時) (レス) id: 188fe56108 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:羽飛 | 作成日時:2019年3月9日 12時

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