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ヤンデレメイドさん ページ1

朝。窓から差し込む光が眩しい。
おはよう小鳥さんおはよう世界。


「お目覚めですか、ご主人様」

ぎいとドアを開け、メイドが部屋に入ってきた。ふと気づいた。いつも起こしてくれるメイドじゃない。

「ああ、いつもの方は……本日は病欠でございます」

なるほどそういうことならと、ベッドから起きようとしたそのとき。

メイドが、ドアの内の鍵を閉めた。

なん、で……と言う間もなく、人差し指で口をふさがれた。

「しー…っ…」

「!」
その顔は、笑ってはいるけれど、明らかに狂気を孕んでいた。

「ご主人様。ずっと待ちわびていました」

髪をさらりと撫でられる。

「最初に見たときから……私のお相手はあなただって」

「……」

「やっと、二人きり、ですね……」

その目は、完全に闇に染まっている。

「如何しましょうか……」

頬をうっすら撫子色に染めてそう言ったかと思えば、口を……口で塞がれていた。
唇を軽く舐め、彼女は言った。

「病欠の方……実は私が毒を盛ったんです」

驚いた。まさか、そんな。

「こうでもしないと、私は、あなた様に会えなかったんですよ……仕方、ありませんよね?だって、この私の愛故に、なんですから」

「まだ朝食までには時間があります。一つ……お願いできませんか……?」

腰に手を回して、そっとなぜられ、思わず身を引いてしまった。

「あら…」

うっとりとした表情で、

「お可愛いこと……」


「さて、“お相手”、して頂けませんか?」


どうしよう……こんな目にあうなんて……。

ズボンに手をかけられた、その時。

「何故ドアに鍵が?ご主人様、起きてらっしゃいますか?」

ドアの向こうで、別のメイドの声がした。

彼女はズボンから手を放し、一緒ぞっとするほど不機嫌な表情を浮かべたあと、さっきとは打って変わって明るい声で、

「はい、ご主人様は今お起きになったところでございます。」

と言った。

――――怖い。

そしてくるりと振り返り、耳もとで囁いた。

「残念ですね……でも、大丈夫です。私はいつでも準備をしておりますから……。」

彼女はドアの鍵を開け、外へ出た。

最後向けられた流し目は、歪んだ愛を携えていた。

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作者名:ひとまる | 作成日時:2022年7月18日 23時

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