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波立つお茶会。2 ページ27

「食後の紅茶の角砂糖の個数は二個と決まっているんです」


紅茶に入れようとして手にかけた三つめの角砂糖を掴んでいた手を停めるそしてぼんやりとした頭で、そういえばここはハーツラビュルだったな…と清雅な細工を施されたティーカップを見遣りながら推し量る。

郷に入れば郷に従え、というように今は素直に従った方が良さそうだと掴んでいたシュガートングをそっと元に戻した。本当は三つ入れたかったんだけど、仕方あるまい。

緩慢な動作で取っ手を摘み、軽く香りを堪能してから口付ける。矢庭に口腔に広がるツンとした柑橘系特有の酸味とちょっとばかりの味気なさ。美味しい。上質な茶葉を使っているのだろうか。ほっと息をついて、瞼を落とすと「イイね〜!その顔!」とパシャリ、機械音が耳を掠め即座に顔を上げた。少し捻れた茶髪が視界に入る。ケイトくんだ。


「#噂のイケメン!#何でもない日のパーティー#急遽参加!?#やはり映える…。とこんなカンジかな〜?」

「ちょ、ちょちょいちょいちょい」


慣れた手つきでフリック操作をしてのけるケイトくんの手を抑える。きょとん顔のケイトくんを一瞥し、視線を上へと投げた。無意識的に視線の先を追ったケイトくんの一瞬の隙を突き、手元から素早く携帯を抜き取る。編集途中のマジカメを削除し、次いでに写真フォルダの中にあるものも消しておいた。口をはくはくさせて、面に驚愕という文字を浮かべているケイトくんに少しばかりの罪悪感が募る。


「げっ、Aクン何してくれてるの!折角いい写真が撮れたと思ったのに〜!」

「…。妥協してくれないと困る。人に撮られるの、すきじゃないんだよ」

「絶対写真撮った方が楽しいのに…」


分かり易く肩を下げたケイトくんを見ていると、正面から視線を感じてそちらに流す。ほんの、ちょっぴり。少しだけ。普通の人なら気が付かない程度のもの。しかし、小さい頃から己を護る武器になると教えられてきた護身術等のお陰で、人の気配たるものには聡かった。

横目で視線の主を見据える。主は伏し目がちに紅茶を啜っていて、どうやらその目には暗澹というかなんというか。そういう類のものが浮かんでいる。何時ぞやの引き留められた時と同じ色だった。

リドルくんは視線に気がつき、そっとカップを置くと「Aさんは」と枕詞をつける。ピシャリと空気に皹が入った様な気がして、明らかに先程とは違う態度にケイトくんさえも口を噤んでしまった。


「…。……矛盾、していますね」

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27(にな)(プロフ) - 無名ちゃんさん» 無名ちゃんさん。コメントありがとうございます。はわわ、そう言っていただけで嬉しいです、、、、長ったらしく会話文あまりないので、受けがあまりよくないのかなと考えていたので良かったです涙。励みになりました、、、是非ともご贔屓にお願いします。 (2020年7月18日 19時) (レス) id: 7dc834a05f (このIDを非表示/違反報告)
無名ちゃん - 初めまして!!コメント失礼します!!あああ、もう文章の表現がお上手というか原作沿いなのにここまで違和感なくオリジナル要素入れられるの尊敬します!!これからも頑張ってください!応援してます! (2020年7月18日 18時) (レス) id: 760416d1ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:27(にな) | 作成日時:2020年7月9日 18時

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