└▽ ページ14
さて、もう明朝にはここを出なくてはならない。食堂で焼き飯を食べて自室に戻って、どこからか感じる虚しさ。自分の右手には、まだあの手錠が握られている。
もし、そうこれは、もし、ifの話。
Aを信じて、きっと俺が帰ってきても笑顔で生きて迎えてくれると思ってこのまま野放しにするのなら。
俺はきっといつか壊れて、死ぬ。
Aは可哀想な子供だった。親に捨てられ、戦場に放り投げこまれ、女なのに厳しい訓練を沢山受けて。愛情を知らない、感情の無いただの人形。
だから、人から受ける愛が怖い。
いや器が小さいとでも言おうか。たとえどんなに大量の愛を受け取っても全て零れ落ちていく。それだから俺がどんなに注意喚起をしてもその器には収まらず、落ちていく。
じゃあ、それ以上の大量の愛を。
器は小さいとしても、その落ちた先の世界は無限じゃない。いつかは零れ落ちた愛が侵食していく。しかしそれをAは愛と受け取れない。限界を超えてなお溢れるそれ。もうそれは恐怖なのだ。
恐怖がAを埋め尽くす前に、頭のいいAは悟る。「ああ、受け入れてしまえば、そうすればもう大丈夫だ」と。
俺のヘドロのような醜い愛を受け入れるその日はきっとそう遠くない。そんなことを考えれば、口角が上がる。
ああ一体、あの虚しさはどこから来ていたのだろうか。
「"大丈夫"、やで、A」
呪詛。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 116人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
璃々衣(プロフ) - 代口さん» ありがとうございます！私もそう言って頂けると、次への原動力となります。完結遅くなりましたが、お付き合い頂きありがとうございました！ (2017年4月15日 23時) (
レス) id: dce6dcb973 (このIDを非表示/違反報告)
代口 - この作品が本当に好きでして､探しても探しても無い時は本当に萎えてたんですけど､今こうして完結まで見る事が出来て幸せです｡更新お疲れ様でした､最高にこの作品が好きでした｡突然失礼致しました…! (2017年4月15日 22時) (レス) id: 0f48d8c048 (このIDを非表示/違反報告)
璃々衣(プロフ) - ちあきのこさん» ありがとうございます！ (2017年3月12日 21時) (レス) id: dce6dcb973 (このIDを非表示/違反報告)
ちあきのこ(プロフ) - お疲れ様です (2017年3月12日 19時) (レス) id: 6fa1dab3c3 (このIDを非表示/違反報告)
璃々衣(プロフ) - #柊#さん» ありがとうございます…！多分今年度最後の長編になってしまうので頑張りたいと思います……！ (2016年11月12日 20時) (レス) id: dce6dcb973 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
