侍の紅一点 (ページ39)

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過去編17話ページ39

「確かに、Aの実力は桁違いです。でも何で…」

「聞いちまったんだよ…昨年の夏の優勝は審判のお陰って言って、三重の監督がウチの監督をバカにするのをよ…」

「…！」

「もしこのままだったら、バカにされっぱなしだ。なら、完膚なきまでに叩き潰して、寧ろ三重高校の準優勝は審判のお陰って事にしてやりたい！お前らはそう思わねぇか？」

最初は難色を示した中村達だったが、最後は応じた

打線が噛み合ってなかった事もあり、三重の守備陣はどこか気を抜いていた

「へっ！昨年以上との噂だった大阪桐蔭も、意外に大したことねぇな！」

「…悪いですが、ここからは今までとは違います。何とか心折れない様にする事を勧めますよ」

「あ…？」

1番の丸山はそう宣言すると、初球から甘い球をヒットにする

続く増田も、さっきまでのように難しい球に手を出すのは避けつつ粘り、7球目に2ベースを放った

「おい見ろよ尚真！増田の奴、活躍してんぞ！」

同じく三重県に遠征に来ていた横浜高校のメンバーが、試合を目撃する

「あぁ。見たよ」

中学時代の弟分の活躍に、2年生エースの藤平も嬉しくなる

「そうか。尚真、次の打者相手ならどうする？」

「決まってるだろ。勝負してねじ伏せ、勢いを削ぐ！」

だが中村は外中心に逃げられ、最後は歩かせた

そしてAに打席が廻り、三重高校も少し慌てる

「(外、外、外。捕手がこんな逃げ腰じゃあ、投手も戦えないよ)達也、黒宮ちゃんと神凪の打席終わったら、帰ろうぜ」

「え？最後まで見ないの？」

「こんな場面で弱気になる三重高校に興味は無いし…このチャンスで打てないクリーンアップなんて、たかが知れてる」

Aは強烈なスリーベースを放ち、次の蓮は場外ホームランを放った

5-2、一気に逆転した

これを見て、藤平達は球場を後にする

その裏、力を入れたAは三重高校の打者を連続三振に斬ってとる

「何やってる！？1年の女子高生に打たれた挙句に抑えられるなんて、恥ずかしいと思わんのか！」

「む、無理ですよ…あんな選手、東海地区でも見た事ありません…何か突破口を…」

「自分で考えろ！そんな知恵もないのか！」

ここで必要なのは爆発力であったが、バランス一辺倒の三重高校にそんな物はありはしない

最早、三重高校に打つ手はなかった…

「凄いチームやな。そして改善点もある…西谷くんもこんなチーム率いれるのは、監督冥利に尽きようて」

中村監督はそう評した