美人だ ページ3
「おーい、庄左ヱ門、彦四郎夕方だぞ起きろー」
俺はあの女の人が用を済ませて帰る時に顔をしっかり見ようと思っていた。けれど結局その人は帰って来なかった。長いこと待ったけど、もう夕方なので庄左ヱ門と彦四郎を起こして2人と解散し、三郎と食堂に行った。
俺たちは少し遅れて食堂に行ったから、食堂に入る前に色んな先輩や後輩とすれ違った。
「あの女まだ学園長先生と話してんのかね」
三郎が言った。多分あの人に興味がある訳じゃなくて、俺が気になっていたからだと思う。
「んー。何話してるんだろ。あ、おばちゃん俺Aランチで」
今日のAランチはハンバーグ。Bランチはサバの味噌煮。
「女がくの一だったとすれば、任務とかだろうな多分。私Bランチで」
「はいよー」
俺はAランチを持って椅子に座った。三郎が隣に腰を下ろす。美味しそうなハンバーグ匂いが鼻を通る。
「まー、もうあの女帰ってるだろうから、また今度だな。いただきまーす」
「いただきまーす!」
「おれふぁ(さ)、ふぁ(あ)のひほ(人)みはこほ(見たこと)、ゴクン… ある気がする」
食べながら言うな!
って多分いつもなら言ってるはずだけど。今日は見なかったことにして話を聞いた。
「…いつ?」
「んー、何年か前、かも」
「かもって」
俺たちがその人の話をしていた時、後ろの方で「ごちそうさまでした」と誰かが言った。全く気配を感じなかった。
その瞬間、時間がスローモーションに動いて見えた。声の主は、美人だった。
少しつり上がった綺麗な目。立花先輩並に手入れされている髪。紅の塗られた赤い唇。
周りの声がが耳に入らなくなるほどその人を見つめた。
その人が食べ終わった食器をおばちゃんに渡した瞬間、
俺の中の時間が動き出した。
「ねぇ三郎…あれ…」
「ああ。あの人だ」
「俺行ってくる」
言うが早いか、俺はすぐに彼女を追った。
忍者だけあって歩くのが早くなかなか追いつけない。食堂の通路を抜けて外に出ると、やっと背中が見えた。忍者といえど女性なので華奢で背筋も伸びている。
何より、まとめられた髪が風でなびくのが綺麗だった。
「あの!!」
彼女は振り向き、
「…もしかして私の事?」
と言った。可愛い。
「は、はい!!」
その時俺は何を思ったんだろう。
いや、きっと何も考えてなかった。
ここで止まっていればいいのにとあとで思った。
俺はめいっぱい息を吸った。
そして
「…っ付き合ってください!!」
「は?」
最悪だ。
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ねう。(プロフ) - 一気読みしちゃいました!とっても面白いです😢😢 (11月28日 17時) (レス) @page26 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
来夢(プロフ) - ぐらさん» こちらこそありがとうございます! (2021年1月31日 14時) (レス) id: 432cdd0ce8 (このIDを非表示/違反報告)
ぐら(プロフ) - 来夢さん» ありがとうございます。 見てみますね! (2021年1月31日 9時) (レス) id: 3a7d057f41 (このIDを非表示/違反報告)
来夢(プロフ) - ぐらさん» あとぐらさんがもし気に入って下さったらリクエスト受け付けておりますので、リクエストして下さいね! (2021年1月30日 19時) (レス) id: 40cb41754a (このIDを非表示/違反報告)
来夢(プロフ) - ぐらさんの小説めっちゃ面白いです!これからも更新頑張って下さい( ̄^ ̄)ゞ応援してます!ところで、私道明寺来夢で"仮面被り"という小説を出させて頂いてます!良ければ一度拝見して下さるととても幸いです! (2021年1月30日 19時) (レス) id: 40cb41754a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぐら | 作成日時:2021年1月8日 2時