105名目 団体客来店�� ページ6
あと5分もしないうちに、将軍様と真選組がやって来る──というのに小鞠庵は今、全然準備万端の状態ではない。
もちろん、お茶や和菓子が足りないとかそういうことではない。
それは昨日のうちに抜け目なく準備してある。
なら何が準備万端でないのかというと──
「なんでアンタ来ちゃったの……」
そう、あれだけ来るなと釘を刺しておいたのに、小太郎がやって来たのだ。
「団体客が来るというから、手伝いに来てやっただけだ」
涼しい顔をして、小太郎は言う。
実を言うと、小太郎には誰が来るのか言っていなかった。というのも、もしも将軍様と真選組が来ると知ったら、小太郎も絶対にここに来ると思ったからだ。
言わなくても来てしまうなんて……これは逃れられぬ因果なのか？
急いで帰らせようかとも考えたが、途中で真選組と鉢合わせになる可能性に気付き、そのアイデアは却下した。
「……取り敢えず、今日はアンタが小太郎だってバレないようにしてよ」
自分の身に迫る危険に気が付いていない小太郎を厨房の奥に引っ張る。
「今日は将軍様と真選組が来るの。だからアンタがここにいるのは、すごく危険なことなの、わかる？」
「そ、そうであったのか……だからお前は昨日、再三、俺に来るなと言っていたのか」
「そうだよ、全くもう……。ま、来ちゃったものはしょうがないから、今日は変装でもして、ウチのバイトのフリをしてて」
「しかし、あいにく俺は今日は変装グッズは持ち合わせておらんぞ」
と、その時、厨房の暖簾の向こうから、私を呼ぶ声が聞こえた。
もう来てしまったらしい。
「ああ来ちゃったよ……、じゃあ女装でもして。そこの階段上がったところが私の部屋だから、タンスの中の着物、好きなの着て」
早口でまくし立て、今日限定だから、と付け足すと、私は厨房を出た。
小太郎がちゃんと変装をしてくれるか、若干不安だが、今は信じるしかない。
「お待たせしてすみません、いらっしゃいませ」
練習した営業スマイルを張りつけ、私は、ずらーっと店先に並んで立っている真選組の隊士たちに頭を下げた。
「ん、アンタがここの店主か？」
肯定しながら顔を上げると、目つきの鋭い男と目が合った。
「今回は急で悪かったな。将軍様がどうしてもっつって聞かなかったらしくてよ。まだ、お見えになってねェが、もうすぐいらっしゃると思うぜ。ま、今日一日、失礼のねェように頼む」
私に手紙を寄越したのはこの人に違いない。
クールに、さらりと用件を伝えた瞳孔の開いた男を見て、直感的にそう思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 84人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Physics(プロフ) - モモうささん» コメントありがとうございます！松陽先生視点の過去篇は力を入れて書いたので、そう言っていただけて嬉しいです！更新がゆっくりですが、これからも宜しくお願いします！ (2017年6月30日 19時) (
レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
モモうさ - 過去編の時の先生の回想シーンで、グッときた…。それに、桂が可愛い！「コタちゃんじゃない。かつ…」が、気に入りました！ (2017年6月27日 23時) (レス) id: 15c04f38df (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - 獅子の子さん» ほんとですか？よかったです！ウブな感じに描きたい回だったので、グワッときてもらえているようで、ほっとしました！ (2017年6月18日 21時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - あ''ぁぁぁ、桂可愛いよ尊いよ！ ちょっとこの回でグワッときました、グワッと(語彙力) (2017年6月18日 12時) (レス) id: d0488b3ee5 (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - マヨ方さん。さん» 綺羅凛子に笑っていただけてよかったです！相変わらずの亀足更新ですが、よろしくお願いします！ (2017年6月9日 20時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Physics | 作成日時：2017年4月23日 18時
