133名目 小鞠庵の危機�� ページ34
〜〜〜〜
「では３日後、また伺います」
去っていく居島さんの背中を見送り、私は息をついた。
小鞠庵開店の動機や手順などを詳しく説明すること小一時間。
居島さんは小鞠庵の土地の所有者らしい天人に掛け合ってみる、と言ってくれた。
掛け合ってみるのはもちろん、立ち退きをしなくてもいいかということである。
相手を頷かせるのは至難の技だろうけれど、頷かせるのが私の仕事ですから、と居島さんは微笑みつつも頼もしい言葉をくれた。
──にしても。どこで小鞠庵廃業の情報を手に入れたんだろう。しかも、私が頼んだわけでもないのに自主的に来てくれるなんて。
一瞬、居島さんを疑いかけたが、今のところ金を寄越せとは言われていないので、その疑いは頭の隅に追いやった。
今考えるべきは、小鞠庵を失った場合にどうやって生計を立てるかなのだから。
〜〜〜〜
３日後の朝、落ち着かない気分を持て余して店内をウロウロしていると、来客があった。
いつもと変わらぬ幼馴染の登場。
気持ちが少しだけ鎮まった。
〜〜〜〜
緑茶を頼まれた私はてきぱきと淹れ小太郎のところへ運んだ。
この光景を見ることも、もうなくなるのかな──。
うむ、美味いな、と呟きながら緑茶を啜る小太郎を見て、そんなことを思った。
すると向こうも同じ事を思ったのか、神妙な顔をして、
「……もし、茶屋を畳まねばならぬことになったら、お前はどうする気だ」
「どこかの店で住み込みで働こうかなって」
隣に腰を下ろして答えた。
「では、江戸から離れる気はないのだな？」
頷くと、小太郎は目に見えてほっとした。
「会えなくなるのがそんなに嫌だった？」
からかったつもりだった。顔を真っ赤にして否定するのを予想した。
しかし、予想に反して小太郎は真剣な声音で紡いだ。
「ああ、お前と離ればなれは、もう御免だ」
どこか切ない表情と飾り気のない言葉、真っ直ぐな眼差しに、一瞬だけ心臓が跳ねた。
その一瞬と小太郎から目をそらし、行き場のない視線を外へ投げる。
しばらく沈黙が続いたが、それを小太郎の遠慮がちな声が破った。
「……A、その……もしも……もしも、行き場を失ったら……、俺のところに来て、くれて……構わん、のだからな……」
たどたどしい口調の主を見やると、目が泳いで頬が赤くなっているのが分かった。
「メシくらい奢ってやる。志士になれとも言わん。だから……お前さえ良ければ、俺は……お前を……………」
後半、よく聞き取れなかった。
それを聞き返そうとしたとき、第三者が現れた。
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Physics(プロフ) - モモうささん» コメントありがとうございます！松陽先生視点の過去篇は力を入れて書いたので、そう言っていただけて嬉しいです！更新がゆっくりですが、これからも宜しくお願いします！ (2017年6月30日 19時) (
レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
モモうさ - 過去編の時の先生の回想シーンで、グッときた…。それに、桂が可愛い！「コタちゃんじゃない。かつ…」が、気に入りました！ (2017年6月27日 23時) (レス) id: 15c04f38df (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - 獅子の子さん» ほんとですか？よかったです！ウブな感じに描きたい回だったので、グワッときてもらえているようで、ほっとしました！ (2017年6月18日 21時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - あ''ぁぁぁ、桂可愛いよ尊いよ！ ちょっとこの回でグワッときました、グワッと(語彙力) (2017年6月18日 12時) (レス) id: d0488b3ee5 (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - マヨ方さん。さん» 綺羅凛子に笑っていただけてよかったです！相変わらずの亀足更新ですが、よろしくお願いします！ (2017年6月9日 20時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Physics | 作成日時：2017年4月23日 18時
