【銀魂】人気のない茶屋には珍客が来る3

114名目 Are they Jackie？ ページ15

「貴方が護るべきものは、民の身ではなく、願いです。土壌整備をしてほしいとか、もっと税を軽くしてほしいとか、勉強をしたいとか……そういった、私達の願いを護るために、国の仕組みを整える──それが貴方の本当の役目なのではないですか？」


「……民の願い……」


私の言葉を、神妙な顔つきで繰り返す将軍様に頷きかける。


「そうです。だから、私の願いを護ってください。そして、将軍様自身の願いも」


「……そなたの願いとは？」


「それは幾つもありますが、今、私が一番将軍様に護っていただきたい願いは、貴方と同じです」


「余と同じ？それは……友を失いたくない、ということか……？」


「はい」


「しかし……余の願いとそなたの願いを同時に護ることは……」


無理だ、という言葉を、私は簡単ですよ、の一言で遮った。


それから、私達のやり取りを不愉快そうに聞いていた浪士に向き直る。


「将軍様、私の手首をしっかり握って抑えていて下さい」


拳銃を両手で構え、浪士の左胸に照準する。


すると、私の手を、背後から伸びた将軍様の手が、そっと包んだ。


「……生き延びましょう、二人で」


将軍様の手に力が入った。


その手の温もりと強さが、胸の奥底の恐怖を拭い、私の背中を押す。


「そうか……二人して死ぬってか。まあいい、望み通り、二人仲良くアッチに送ってやらァ……！」


そう叫ぶや否や、浪士は蛮刀をぎらりと光らせて、私達に疾駆してきた。


それと同時に、重い引き金を引く。


刹那、生まれた衝撃。


本来ならもろに私に伝わるはずのそれが、将軍様の手に吸い込まれていく。


が、やはりほんの少し、手首が跳ねた。


鋼の実弾は、浪士の左胸には命中せず、刀を握る右肩へ命中した。


──ああ、はずしてしまった。


「ぐうっ………！」


しかし、少しの隙は生まれた。


浪士が刀を落としたのだ。


──今のうちに逃げれるか？


刀を彼が拾いあげる前に走って路地を抜けてしまおうと思い立った矢先。


私達と浪士の間に一つの影が降ってきた。


「──……斎藤さん……！」


私は、見慣れた派手なオレンジアフロの彼の名を呼んだ。


返事の代わりなのか、オレンジアフロさんは背中の二つの刀を抜き取り、鞘走りの音を大きく響かせる。


「チッ……、クソッ！幕府の駄犬風情がッ、この期に及んでまだ邪魔をす────」


憎々しげに罵詈雑言を浴びせようとした浪士だったが、その言葉は最後まで続かなかった。


トン、と。


浪士の背後に降り立った人物が、彼の首にささやかな衝撃を加えたのだった。

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