113名目 We are Jackie!! ページ14
いくらか気持ちが落ち着いてから、私は将軍様の手を取った。
「そろそろ行きましょう。更なる追っ手が来るといけないので」
「そうだな、参ろう」
路地を抜けようと走りかけて直ぐに、私達は止まらざるを得なくなった。
何故なら、私達の行く手を遮るように。
「……へへッ」
一人の浪士が建物の上から飛び降りてきたのだから。
「……っ!」
咄嗟に将軍様を庇うように前に立ち、私は再度、拳銃を構えた。
殺傷能力を持つ本物の拳銃を見て浪士が怖じ気づく──という展開を予想したが、それはあっさりと裏切られた。
「なんだよ、それで俺を怯ませようってのか?」
ひび割れた声で、浪士は嘲笑うと、抜き身の刀を肩に背負った。
その余裕たっぷりの態度に、私が怯まされたのは言うまでもない。
「こ、これは脅しではなく忠告です。手を退かねば、この拳銃で貴方を──」
今度こそ明確に浪士は嘲笑った。ところどころ欠けた歯を見せつけるように、大きな口を開けて笑っている。
「さもなくば殺しますってか?よく言うぜ……」
「何を言って……」
「あの腰抜けどもは逃げやがったが、俺ァ逃げねェぜ?殺す気のねェなまくら弾なんざ、避ける必要ねェからなァ?」
短い髭が生えた口周りに、凄惨な笑みを深く刻んで続ける。
「……なァ、姉ちゃん、お前の後ろの将軍、さっさとこっちに寄越したらどうだ?そしたら、お前は見逃してやるよ。俺だって無駄な殺人はしたくねェからなァ」
試すような目を私に向ける。
「お断りします」
その時、きっぱりと告げた私の肩を将軍様が掴んで、後ろ引いた。
「そなたの望みは余の命なのだろう?分かった……行こう」
震えながらも芯のある声で将軍様は言い、浪士に歩み寄ろうとした。
その腕を慌てて掴み、引き留める。
すると、将軍様は私を振り返り、儚げに微笑んだ。
「A殿……ここまで余を護り抜いてくれたこと、感謝してもしきれぬ。ありがとう……すまない」
「何を……何を仰るんですか……!私たちで逃げきるんじゃなかったんですか……?」
「このままでは無理だ……。それに、余は大切な友人を危険に晒してまで、生き長らえたいとは思わぬ。民を護るのが、将軍たる余の役目、なのだから」
「……“民を護る”?私は貴方に私の命を預けた覚えはありませんし、この国の人々は誰も貴方に命なんて預けていません。自惚れないで下さい」
わざと尖った言葉を投げつけると、将軍様は傷付いたように目を伏せ、じわりと涙を滲ませた。
その表情にちくりと胸が痛んだが、堪えて言葉を続ける。
114名目 Are they Jackie?→←112名目 We are Jackie!
84人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Physics(プロフ) - モモうささん» コメントありがとうございます!松陽先生視点の過去篇は力を入れて書いたので、そう言っていただけて嬉しいです!更新がゆっくりですが、これからも宜しくお願いします! (2017年6月30日 19時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
モモうさ - 過去編の時の先生の回想シーンで、グッときた…。それに、桂が可愛い!「コタちゃんじゃない。かつ…」が、気に入りました! (2017年6月27日 23時) (レス) id: 15c04f38df (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - 獅子の子さん» ほんとですか?よかったです!ウブな感じに描きたい回だったので、グワッときてもらえているようで、ほっとしました! (2017年6月18日 21時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - あ''ぁぁぁ、桂可愛いよ尊いよ! ちょっとこの回でグワッときました、グワッと(語彙力) (2017年6月18日 12時) (レス) id: d0488b3ee5 (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - マヨ方さん。さん» 綺羅凛子に笑っていただけてよかったです!相変わらずの亀足更新ですが、よろしくお願いします! (2017年6月9日 20時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Physics | 作成日時:2017年4月23日 18時