111名目 We are Jackie ページ12
小太郎が歯噛みするのを見ていると、今度は長官に名を呼ばれた。
「妹の方のネエチャンよォ、悪ィが将ちゃん連れて逃げてくれ」
そう言って、眉間に皺を寄せた将軍様を私の方へ押し出す。
「十人以上で殺り合うにゃ、お前ェさんの店は狭すぎる……。このままじゃ、将ちゃんがいつ巻き込まれるか分からねェからなァ……」
長官の指摘した通り、店の狭さが仇になり、隊士たちは思うように動けていないようだった。
きっと広い空間で戦ったら瞬殺できる相手なのだろうけれど、仲間に刀が当たらないように気を付けているからなかなか、一本とれない。
「……分かりました」
私は息を吸って、いくらか冷静になった頭を縦に振った。
「──これ持っていけィ。使い方は分かるか？ここをいじらねェと弾は出ねェから気を付けろィ」
長官は一丁の拳銃を懐から出すと、安全装置を外して見せ、それからもう一度下ろして私に放ってきた。
「弾は５発、だ。よォォく、考えて撃てよ」
「……はい。使わないで済むことを願いますが」
使い方は分からなかったが、質問している暇などなさそうだったので、ずっしりと重いそれを受け止めるや否や、将軍様の手を引いて裏口から店を飛び出した。
──────
───
裏の道を小走りで進み、私達は江戸城を目指していた。
「……すまない、A殿……」
顔を歪めて将軍様は並走する私を見、追っ手を振り返った。
「……私の方こそごめんなさい……こんな頼りない護衛で」
前を向いたまま、私は答える。
ああ、私なんかが将軍様を連れて逃げるよりも、真選組の隊士が連れて逃げた方がよかったんじゃないか。
そう重いながら、私たちは路地に回り込み、ゴミの入ったバケツを倒して、追っ手をささやかに妨害した。
こんなことしか出来ないのだから、追い付かれたらおしまいだ。
銃を撃って、まともに当てられるとは思えないし、追い付かれたらきっと──
嫌な思考をそこで中断した。
「あれはッ………！」
将軍様の驚愕の声がしたたかに私の耳をうった。
指差す方を見れば、路地の向こうに浪士の一行が。
「……挟み撃ち……！？」
足を止めて後ろを見れば、やはり浪士たちがおり、向こうにいる仲間の存在に気付くと、薄ら笑いをもらした。
その笑みを消さぬまま、両サイドの一行はじりじりと私達に近付いてくる。
「ったく、ちょこまかちょこまか逃げやがってよォ……。ま、そろそろ終いとし──っ！？」
彼等が接近を一旦中断したのは、私が拳銃の安全装置を外し、ハンマーを起こした瞬間だった。
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Physics(プロフ) - モモうささん» コメントありがとうございます！松陽先生視点の過去篇は力を入れて書いたので、そう言っていただけて嬉しいです！更新がゆっくりですが、これからも宜しくお願いします！ (2017年6月30日 19時) (
レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
モモうさ - 過去編の時の先生の回想シーンで、グッときた…。それに、桂が可愛い！「コタちゃんじゃない。かつ…」が、気に入りました！ (2017年6月27日 23時) (レス) id: 15c04f38df (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - 獅子の子さん» ほんとですか？よかったです！ウブな感じに描きたい回だったので、グワッときてもらえているようで、ほっとしました！ (2017年6月18日 21時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - あ''ぁぁぁ、桂可愛いよ尊いよ！ ちょっとこの回でグワッときました、グワッと(語彙力) (2017年6月18日 12時) (レス) id: d0488b3ee5 (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - マヨ方さん。さん» 綺羅凛子に笑っていただけてよかったです！相変わらずの亀足更新ですが、よろしくお願いします！ (2017年6月9日 20時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Physics | 作成日時：2017年4月23日 18時
