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三十七 ページ7

甲板に出ると橙色の海が広がっていた。




「綺麗」




水面は日差しを浴び、きらきらと輝く。
甲板にある大砲や景色を見て、ころころと表情を変えながら、歩き回る。
それは少し幼なげで、出会った頃の陸奥を彷彿とさせた。
その様子を見た船員も同じように思ったのか、くすくすと笑っている。



「坂本さん達はいつもこの景色見てるんですか?
いいなあ」



そう言って舳先に足を進める。
水面に近づけば近づく程、水面の光が反射して、Aを輝かせた。


(嗚呼、綺麗ぜよ)


白い肌。

光を浴びて透けた髪。

海風で髪が揺れ、つぶらな瞳が覗く。




「じゃあ、わしらと一緒に行くか?」




「…え?」




坂本は思わず、口にしていた。



(まるでプロポーズぜよ)



恥ずかしさの余り、一つ咳払いして何でもないと誤魔化した。
Aは困惑したように、坂本を見つめていた。

そんなAの目線を掻き消すように、坂本はAの目を大きな手で覆う。



「坂も」



「見らんどくれ」



「…見せて下さい」



Aは小さな手で大きな手を退けていく。
Aは坂本の顔を見て、にっこりと笑った。




「何じゃ。わしが顔が赤いっちゅうんか。太陽のせいぜよ」




「違いますよ。目です、目」




背伸びをして、坂本の眼鏡に手をかける。

そして両頬を両手で挟み、Aと同じ目線になるように坂本を屈ませた。



「この前、抱え上げられた時、坂本さんの目をまじまじと見たの初めてで。綺麗な青色だなと思ったんです。






今日は一段と綺麗に見えますね」





坂本の中で時が止まっていた。




どくどくと心臓の音が煩い。




(このまま口付けでもしてやろうか)




そんな考えが頭を過ったが、





「お姉ちゃんが青色の服着ているのは坂本さんの素敵な目の色だからですね」




なんてすぐに姉の話をする姿に気持ちが薄れてしまった。

Aの首元を見て、手に持っていた物を思い出す。
がさがさと紙袋を漁り、Aの首にそれを掛けた。
Aは、急に触れられた手に目を丸くし、身を硬くする。



「これは…?」




「首巻きぜよ」




絹の素色の首巻きをAにするすると巻いていく。
Aは嫌がることなく、そのまま坂本に巻かれていた。




「ありがとうございます。大切にします」




嬉しそうに首巻きに頬擦りし、また笑う。




(金時、陸奥。わしはAが好きぜよ)




坂本はAと揃いの色の自分の首巻きにそっと触れた。

.

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設定タグ:銀魂 , 坂本辰馬 , 坂田銀時   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:Nattu | 作成日時:2021年1月27日 2時

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