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【銀時】
「律儀にも約束守ってくれてるのな」
俺がそう言うと不機嫌な表情を浮かべて俺を見る紅薔薇太夫。
あの約束から今日で3日目。
今のところ死人は誰1人出ていないとのことだ。
俺は部屋に入り腰を下ろした。
完全に俺の前じゃ遊女モードOFF。
こんなにも遊女が露骨に迷惑そうな顔をするのはなかなかの見物だった。
「お前に手土産持ってきた。ほら食えよ」
俺は地上で買ってきて団子を差し出した。
この女はかなり高級な物を食ってるだろう。
だからこんな見るからに安そうな団子なんていらないとでも言いそうだったが案外すんなりと受け取ってくれた。
「あれ、今食べないの?」
「後で日輪太夫に差し上げます」
「俺はお前にあげたんだけど。お前が食わなきゃ意味ねぇじゃん」
「先程昼食を食べたばかりです」
受け取っただけで食わねぇってことか。
まあそれでもいい。
未だに距離感は果てしなく遠いがそのうち少しづつ心を開いてくれるかもしれない。
俺は紅薔薇太夫の手に目を向けた。
こんなに着物を着込んでいてもかなり貧相な身体だってのはわかる。
普段なにも食ってねぇんじゃと疑うほどに紅薔薇太夫は細かった。
「あ、そうだ。今日は聞きたいことがあったんだ」
「答えたら出て行ってくれるんですか」
「んー、残念だけどそれはしねぇな」
まだ来て数分しか経っていないのにもう俺を帰らせるつもりか。
ったく愛想無くて可愛くねぇの。
けど俺がこうしているのは────────日輪からの依頼ってのもある。
殺された客は全員紅薔薇太夫と床を共にしたやつらだ。
日輪だってこいつが犯人だって分かってる。
けどすぐにそれを暴かないのは、紅薔薇太夫には謎が多すぎるからだ。
吉原の人間全員が紅薔薇太夫の素性をほとんど知らない。
日輪が一度対談した時も、この女は全てを偽り本当の話を何一つしてくれなかったと言う。
「お前さ、名前なんて言うんだ?」
「散々呼んでいたでしょう」
「芸名じゃなくて本名だ」
もちろん、紅薔薇太夫は教えてなどくれなかった。
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八重菊(プロフ) - コメントをさせていただきます。もうホンマに、マジで泣きました。ここまで泣いた作品は初めてです.........!素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月15日 1時) (レス) id: 4b3ed537f2 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ものすごく心に残るお話でした。来世で必ず一人の女の子として、銀さんと幸せになってほしいと思いました。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 6dff351985 (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 45話読んだときは、「紅薔薇太夫!何で!?」って思った。でもその後の話を見てたら、何だか腑に落ちた。幸せなまま…… すごくいいお話でした。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 泣いた。いやめっちゃ泣いた。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - ハニーさん» コメントありがとうございます。愛着湧いてしまった夢主ちゃんだったからこそ、早く解放してやらなきゃな…という使命感に駆られてこうなりました笑 (2018年12月10日 3時) (レス) id: 95173b8ff8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠々亜 | 作成日時:2018年10月27日 14時