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【NORMAL】



堪えるように眉を寄せ、切迫した喘ぎ声を漏らす。
男はしなく腰や太股を撫で回した後、紅薔薇太夫の律動を急かすように尻を掴み、欲望のままに激しく揺らし始めた。


紅薔薇太夫は俯いて布団に顔を埋めた。
押し殺すような声が部屋中に漏れる。
────そこに快楽など無かった。


男からは紅薔薇太夫の表情は見えない。
だが漏れ出す声から、紅薔薇太夫が満足しているのだと断定した。







「遊女とは大したことのない女だな」




男は着物を着ながらぶっきらぼうに吐き捨てた。
こうした自尊心の高い男は"この階級の男の中"では決して珍しいものではない。
自身の欲を満たせただけで後は虫けらのように遊女を扱う。



むしろ下手に好意を抱かれるよりはマシだった。
紅薔薇太夫は申し訳なさそうに微笑んだ。




「……だからこそ、殿方様のような方にご指名頂けたのが夢のようです」




「当たり前だ。俺のような男が粗末な女など指名するわけない。俺の階級ではお前を指名するのが妥当だと日輪から聞いたのだ」




「だと言うのにも関わらず…わたくしは殿方様をご満足させることができなかったのですね」




紅薔薇太夫は弱々しい声で苦笑した。
男の傍により頭を下げる。
ゆっくり顔を上げると、目を逸らす男の姿があった。


紅薔薇太夫は目を細める。
やはり、男には余裕が無かった。
この男は完全に自分に惚れているのだと確信があった。




「殿方様」



「な、んだ……」




紅薔薇太夫はゆっくりと男に手を伸ばした。
手が触れると男は一瞬で後ずさる。
あくまでも謙虚に、紅薔薇太夫は詰め寄った。




「わたくしは吉原へ来てまだ4ヵ月しか経ておりません。それゆえここでの生活はまだまだ慣れないのです。でも…」




潤んだ瞳で男を見た。
険しい顔をしながらも頬が赤く染まっている。
部屋が暗くとも紅薔薇太夫にはそれがすぐに分かった。




「そのようにわたくしを評価して頂き本当に感謝しております。殿方様のような方は初めてで遊女だというのに邪な感情すら抱いてしまいます」




「………っ、なにを馬鹿な…」




「もう一度口吸いをしたいなどと申し上げたら……ご迷惑ですか?」




男はもう紅薔薇太夫から逃れられなかった。
気が付けば欲望のままに紅薔薇太夫を押し倒し、乱暴に唇を押し当てていた。

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八重菊(プロフ) - コメントをさせていただきます。もうホンマに、マジで泣きました。ここまで泣いた作品は初めてです.........!素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月15日 1時) (レス) id: 4b3ed537f2 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ものすごく心に残るお話でした。来世で必ず一人の女の子として、銀さんと幸せになってほしいと思いました。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 6dff351985 (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 45話読んだときは、「紅薔薇太夫!何で!?」って思った。でもその後の話を見てたら、何だか腑に落ちた。幸せなまま…… すごくいいお話でした。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 泣いた。いやめっちゃ泣いた。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - ハニーさん» コメントありがとうございます。愛着湧いてしまった夢主ちゃんだったからこそ、早く解放してやらなきゃな…という使命感に駆られてこうなりました笑 (2018年12月10日 3時) (レス) id: 95173b8ff8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠々亜 | 作成日時:2018年10月27日 14時

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