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【NORMAL】




銀時は紅薔薇太夫の背後の壁に手を伸ばした。
至近距離で紅薔薇太夫を見る。
紅薔薇太夫の纏う香が鼻をくすぐった。




「殺しをするのはもうやめろ」




その瞬間、少しだけ紅薔薇太夫の表情が変わった。
今まで以上に鋭く、冷酷な瞳で銀時を睨む。
だが銀時も決してふざけてなどいなかった。




「………今更道徳を説くつもりですか?」




「勘違いすんな。少なくともてめぇのためじゃねぇよ」




このまま紅薔薇太夫を野放しにしておけばどんどん死人が増えることは確かだ。
また客が次々と殺されては吉原の信頼が無くなるだろう。


夜王鳳仙が居なくなった今、いくらでも外部からつけ込まれる。
だからこそ紅薔薇太夫の殺しをやめさせる必要があった。
あくまでも"吉原"のためだ。




「代わりと言っちゃなんだが俺と毎日話しをしねぇか?酌をするだけでいい。それ以上のことは何も望まねぇしお前に触れるつもりも一切ねぇ」




急に出された条件に紅薔薇太夫は警戒心を抱いた。
だが目の前にいるこの男が嘘をつくとは思えなかった。




「貴方と話すことでメリットは?」



「ねぇかもな」




紅薔薇太夫は銀時の手を振り払おうとした。
だがその手は一瞬で掴まれる。
Aと同様、銀時も鋭い瞳をしていた。




「殺したいという衝動が出たのなら俺にぶつけろ。俺は絶対お前に殺されねぇ自信があるし、手合わせ程度には出来るだろうよ」




銀時のような男には生まれて初めて出会った。ほとんどの男は手に取るように全てがわかる。
だが銀時からは多くは分からなかった。


恐らく、一番厄介な相手かもしれない。
しかし抵抗したところで男は決して諦めてはくれないだろう。
紅薔薇太夫はゆっくりと頷いた。




「良いでしょう。甘んじて受け入れます」




その言葉を聞いて銀時は不敵に笑った。
女は今度こそ銀時の手を振り払い立ち上がる。
銀時との時間は今日はこれで終わりだった。




「んじゃ、紅薔薇太夫。また明日会おうな」




紅薔薇太夫はそれを無視して部屋から出て行った。
銀時は紅薔薇太夫の背中を見届け、小さなため息をついた。
不思議とそこにあった感情は温かいものだった。

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八重菊(プロフ) - コメントをさせていただきます。もうホンマに、マジで泣きました。ここまで泣いた作品は初めてです.........!素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月15日 1時) (レス) id: 4b3ed537f2 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ものすごく心に残るお話でした。来世で必ず一人の女の子として、銀さんと幸せになってほしいと思いました。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 6dff351985 (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 45話読んだときは、「紅薔薇太夫!何で!?」って思った。でもその後の話を見てたら、何だか腑に落ちた。幸せなまま…… すごくいいお話でした。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 泣いた。いやめっちゃ泣いた。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - ハニーさん» コメントありがとうございます。愛着湧いてしまった夢主ちゃんだったからこそ、早く解放してやらなきゃな…という使命感に駆られてこうなりました笑 (2018年12月10日 3時) (レス) id: 95173b8ff8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠々亜 | 作成日時:2018年10月27日 14時

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