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【NORMAL】



落ち葉がやんだ頃、早くも初雪が舞った。
吐く息は白く、肌寒い日々が続いた。
そんな中、銀時がふらりと立ち寄った店は以前にも訪れたことのある甘味処だった。



「おばちゃん、きんつば2つ頼まァ」



「あれ銀さん。今日は仕事無かったの?」



「そんなとこだ」



銀時は店内の一番奥の席に座った。
特等席では無いが以前にもここへ座ったことがある。
この席は人目につかないため、"慣れない人"には最適な場所だ。



「はいよ銀さん。きんつば2つね」



「わりぃ」



昼も過ぎ、店内の客は少なかった。
この時間帯が一番空いていることを銀時は知っている。
そのため誰かとここへ来るときはこの時間帯に頻繁に訪れていた。


銀時はお茶で喉を潤した。
目の前に置かれたきんつばに息を呑む。
甘党の銀時を唸らせたこのきんつばは実に美味な品物だった。



「んっま」



口の中に広がる甘さが上質だった。
くどくないその甘みは食べた者を病みつきにさせる。


その時銀時はふと思い出した。
こうしてきんつばを"二つに割ってから食べていた"と。
それだけの動作でも気品は溢れるものである。
銀時は小さく割ったきんつばを口に放り込んだ。



「ふっ……あほだろ俺」



自分の行動が可笑しくて思わず苦笑した。
そのままゆっくりと背もたれにもたれかかる。
銀時は静かに目を閉じた。



「もっと、食わせてやりゃ良かった…」



銀時の独り言は静かに消えた。
たとえ愛想笑いだったとしても、もしここにいたのなら笑って欲しい。



────────紅薔薇太夫がこの世を去ってから、はや1ヶ月が経過していた。

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八重菊(プロフ) - コメントをさせていただきます。もうホンマに、マジで泣きました。ここまで泣いた作品は初めてです.........!素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月15日 1時) (レス) id: 4b3ed537f2 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ものすごく心に残るお話でした。来世で必ず一人の女の子として、銀さんと幸せになってほしいと思いました。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 6dff351985 (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 45話読んだときは、「紅薔薇太夫!何で!?」って思った。でもその後の話を見てたら、何だか腑に落ちた。幸せなまま…… すごくいいお話でした。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 泣いた。いやめっちゃ泣いた。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - ハニーさん» コメントありがとうございます。愛着湧いてしまった夢主ちゃんだったからこそ、早く解放してやらなきゃな…という使命感に駆られてこうなりました笑 (2018年12月10日 3時) (レス) id: 95173b8ff8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠々亜 | 作成日時:2018年10月27日 14時

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