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【銀時】
俺は四つん這いになりながら床を這った。
畳には血潮が染み込み、俺の手にそれも付着した。
俺は横たわる人形────────紅薔薇太夫を抱いた。
「……なぁ、嘘だろ…」
真っ白な肌がいつも異常に白く、その身体は冷えきっていた。
朝に手を繋いだ時、確かにこの手には温もりがあった。
それを心地いいとさえ思っていた。
それなのに、どうしてこんなにも冷たいんだ?
どうして紅薔薇太夫の胸から血が止まらない?
真っ直ぐと奥深くに突き刺さった短刀は紅薔薇太夫を絶命させた。
「……A……A……」
俺は紅薔薇太夫の首元に手を当てた。
脈は止まり、息もしていない。
紅薔薇太夫はもう"ここにいない"。
「な、んで……」
紅薔薇太夫の顔はとても穏やかだった。
微笑んでいるかのような安らかな表情。
ただ眠っているようにしか思えない。
そういえば昨日初めて紅薔薇太夫の寝顔を見た。
俺達は深くまで繋がって、心の底から愛し合った。
紅薔薇太夫の体温があまりにも心地が良くて、その感触は今でも覚えている。
────────だから、こんなに冷たいなんて思わねぇだろ?
「っ……坂田様……これっ…!」
禿は紅薔薇太夫の傍に置いてあった手紙の存在に気づいた。
俺は紅薔薇太夫を抱いたまま手紙を取る。
あー、ほんとなんだよこれ。
"最後"を残すなんてやってくれるわ…
手紙からは紅薔薇太夫の香の匂いがした。
部屋を見渡すと、まだ乾ききっていない墨と筆が机に置いてあった。
死ぬ間際に残した紅薔薇太夫の最後のものだ。
折りたたまれた手紙の表には細く達筆な文字で"坂田銀時様"と書かれている。
俺は息を飲んだ。
そして、ゆっくりと手紙を開いた。
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八重菊(プロフ) - コメントをさせていただきます。もうホンマに、マジで泣きました。ここまで泣いた作品は初めてです.........!素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月15日 1時) (レス) id: 4b3ed537f2 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ものすごく心に残るお話でした。来世で必ず一人の女の子として、銀さんと幸せになってほしいと思いました。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 6dff351985 (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 45話読んだときは、「紅薔薇太夫!何で!?」って思った。でもその後の話を見てたら、何だか腑に落ちた。幸せなまま…… すごくいいお話でした。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 泣いた。いやめっちゃ泣いた。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - ハニーさん» コメントありがとうございます。愛着湧いてしまった夢主ちゃんだったからこそ、早く解放してやらなきゃな…という使命感に駆られてこうなりました笑 (2018年12月10日 3時) (レス) id: 95173b8ff8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠々亜 | 作成日時:2018年10月27日 14時