36【過去編】 ページ36
【A】
私たちは誰にも言えない愚痴や秘密を話したり、叶うことのない自分たちの夢を語り合うようになった。
私が遊郭に縛られているよう、彼も家柄に縛られていた。
私たちは互いに慰め合い、想いを通わせた。
遊郭という鳥籠に閉じ込められながらも、彼は外の世界を話してくれた。
私の知らない世界の話はとても興味が湧いて本当に大好きだった。
「俺の夢を聞いてほしい」
ある日、彼は真面目な顔をして言った。
何かあったのだろうか。
私はすぐさま体勢を整え彼に向き直った。
「夢?」
「あぁ。僕と、君の夢だ」
私の夢は誰かに愛されること。
ただそれだけだ。
だから私の夢はもう十分に叶った。
彼とこうして会える時間が私の幸せだったから。
「わたくしの夢、とは…」
「僕は君をここから解放しようと思っている。一緒にここを出よう」
その瞬間私の身体は硬直した。
遊郭から出る。
それは決して許されない大罪だ。
私の強ばった顔を見て彼は手を取る。
「な、なにを仰って」
「分かっている自分が何を言っているのか。それほど僕は真剣だよ」
彼はそういうと私にキスをした。
そして私の目を真っ直ぐに見つめて言った。
「必ず君を自由にしてやる。だから────────僕と結婚しよう」
想像もつかない言葉だった。
遊郭にいる以上、決して報われない言葉かもしれない。
それにもしここから逃げ出して見つかったら恐ろしい仕打ちが待っている。
それは私だけじゃない。
彼の命にも関わることだ。
────────だがそれ以上に、私の心は幸せでいっぱいだった。
彼との未来が待っている。
それだけしか考えられなかった。
「っ………はい……」
遊女は幸せになんてなれない。
遠い昔、そんなことを姉様が言っていた。
しかし現実はどうだろうか。
本当に、その通りだった。
490人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
八重菊(プロフ) - コメントをさせていただきます。もうホンマに、マジで泣きました。ここまで泣いた作品は初めてです.........!素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月15日 1時) (レス) id: 4b3ed537f2 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ものすごく心に残るお話でした。来世で必ず一人の女の子として、銀さんと幸せになってほしいと思いました。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 6dff351985 (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 45話読んだときは、「紅薔薇太夫!何で!?」って思った。でもその後の話を見てたら、何だか腑に落ちた。幸せなまま…… すごくいいお話でした。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 泣いた。いやめっちゃ泣いた。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - ハニーさん» コメントありがとうございます。愛着湧いてしまった夢主ちゃんだったからこそ、早く解放してやらなきゃな…という使命感に駆られてこうなりました笑 (2018年12月10日 3時) (レス) id: 95173b8ff8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:瑠々亜 | 作成日時:2018年10月27日 14時