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【A】




銀時様の胸の中で泣き続けてどれほど経ったのだろうか。
銀時様は泣き止むまで何も言わず、ずっと頭を撫でてくれていた。


二度と男を信じない。
そう誓っていたのに今の私にはそれが出来なかった。
銀時様には、私の全てをさらけ出そう。


私は決して愛されるべき女ではない。
愚かで醜い哀れな遊女だ。




「銀時様……」




「……ん」





胸の中で呟くと銀時様は私の顔を覗き込んだ。
声を聞くだけで、体温が伝わるだけで、視線が絡み合うだけで胸の音が高鳴る。


銀時様は私の目元にそっと触れた。
まるで割れ物を扱うかのような、本当に優しくて繊細な手つき。
遊女相手に本気になる男など愚かでしかない。


その考えはすっかり私から消えていた。
いや、違う。
私はきっと怖かったのだろう。
"過去"に囚われて、そこから抜け出せなかったのだ。




「……わたくしは京の平民として生まれました」




私は静かにこれまでの生い立ちを話すことにした。
自分のことを打ち明けるのはこれが初めてだ。
今までずっと隠してきた本当の私。
誰も知らない、本当の私。




「4歳の誕生日、わたくしは借金を抱えた父親によって遊郭へ売られました。そして次の日から禿として、遊郭で生きていくことになりました」




私の人生には何一つ明るい過去が無かった。
ちっぽけでくだらない人生。
返って遊郭のトップに君臨するにはふさわしいのかもしれない。


だからこそ全てがどうでも良かった。
復讐のためならなんでもできた。
身体をどんなに売ろうとも、心の奥底では揺るがない醜女としての野望。





「遊郭に売られてわずか3日で、わたくしは35人の男によってたらい回しにされたのです」





おぞましい記憶が蘇ってきた。
あそこにいたのは人間なんかじゃない。
貪欲な理性の欠片もない獣の集団。


私の話に銀時様の抱きしめる腕に力がこもった。
そこには銀時様の怒りが表れていた。

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八重菊(プロフ) - コメントをさせていただきます。もうホンマに、マジで泣きました。ここまで泣いた作品は初めてです.........!素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月15日 1時) (レス) id: 4b3ed537f2 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ものすごく心に残るお話でした。来世で必ず一人の女の子として、銀さんと幸せになってほしいと思いました。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 6dff351985 (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 45話読んだときは、「紅薔薇太夫!何で!?」って思った。でもその後の話を見てたら、何だか腑に落ちた。幸せなまま…… すごくいいお話でした。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 泣いた。いやめっちゃ泣いた。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - ハニーさん» コメントありがとうございます。愛着湧いてしまった夢主ちゃんだったからこそ、早く解放してやらなきゃな…という使命感に駆られてこうなりました笑 (2018年12月10日 3時) (レス) id: 95173b8ff8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠々亜 | 作成日時:2018年10月27日 14時

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