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【A】





「………なぜ、抵抗しないのですか」




沈黙の中、震えた声で私は言った。
銀時様はそんな私を静かに見上げ、とても殺される寸前とは思えないほど穏やかな表情をしていた。
その光景に腹が立った。



「わたくしには貴方を殺す力がないと思っているのですか」




これまで"殺してきた"連中も皆最初は冗談だと思っていた。
だが私はいつだって本気だ。
私は復讐のために生きてきた。


そして銀時様は、そんな私の復讐劇の邪魔者でしかない。
出会ったあの日から彼には全てがお見通しだった。
私の復讐劇の邪魔をして、あまつさえ─────私の心を動かした。




「A」




銀時様の低い声が私の名を呼んだ。
銀時様は私の頬に手を添える。
嫌だ…この体温は嫌いだ…
銀時様といると築き上げた"紅薔薇太夫"がいなくなってしまう。




「……わたくしが本気でないと高を括っているのですね」




「んなこと俺がすると思ってんのか?殺したきゃ好きにしろ。俺が今さら死に恐れを抱くはずもねぇ」




「……ならばなぜ────────」




すると銀時様は片方の手で私の手を掴み、短刀をさらに自分の首へ押し付けた。
手を離そうとするも強く握られた手は決して離してくれなかった。




「銀時様っ…なにを」




「お前になら、惚れた女になら殺されても構わねぇよ」




銀時様の言葉の意味が一瞬理解できなかった。
目を見開き思考が停止してしまう。
だが理解した時にはもう────────涙が止まらなかった。
銀時様の顔に私の涙が落ちる。


銀時様は静かに私の手を離した。
体温が無くなったかと思いきや、今度は全身が温まる。






何度男に抱かれようと、何度男に愛を囁かれようと、この温もりを感じることは無かった。




「……っ…………めて……やめて、ください…」




「やめねぇよ」




銀時様は邪魔者でしかない。
だから私は彼を消さなければならなかった。
銀時様のせいで私はおかしくなってしまったのだから。


殺戮もせず、男に抱かれることを拒んだ。
それでは"紅薔薇太夫"では無くなってしまう。
私たちは出会ってはいけなかった。
なのに。






「愛していますっ……銀時様……」









私は銀時様を殺せなかった。






私は銀時様を愛してしまった。

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八重菊(プロフ) - コメントをさせていただきます。もうホンマに、マジで泣きました。ここまで泣いた作品は初めてです.........!素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月15日 1時) (レス) id: 4b3ed537f2 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ものすごく心に残るお話でした。来世で必ず一人の女の子として、銀さんと幸せになってほしいと思いました。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 6dff351985 (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 45話読んだときは、「紅薔薇太夫!何で!?」って思った。でもその後の話を見てたら、何だか腑に落ちた。幸せなまま…… すごくいいお話でした。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 泣いた。いやめっちゃ泣いた。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - ハニーさん» コメントありがとうございます。愛着湧いてしまった夢主ちゃんだったからこそ、早く解放してやらなきゃな…という使命感に駆られてこうなりました笑 (2018年12月10日 3時) (レス) id: 95173b8ff8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠々亜 | 作成日時:2018年10月27日 14時

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