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【NORMAL】



少しはだけた衣服が艶めかしく、男の身体を浮き出させた。
骨ばった身体のライン、若々しいその後ろ姿に男が見惚れていると紅薔薇太夫は振り返り、ふわりと笑った。




「そんなにまじまじと見つめられては恥ずかしいです」




「何を言う。そなたの美しい身体をこの目に焼き付けたいと思うのは当然であろう」




男は紅薔薇太夫を背後から抱きしめた。
そしてこの日のために用意した道具を懐から取り出した。


男は背後から手を伸ばした。
両膝を広げると低めの電子音がして、大きく振動する何かが敏感な部位にあてがわれた。



「っ……ああっ……」




甘い吐息が口から漏れ、紅薔薇太夫はすぐさま口を塞いだ。
男は意地の悪い笑みを浮かべてさらに奥深くへと押し付ける。


紅薔薇太夫の目に浮かんだ涙は男を一段と活気立てた。
────────紅薔薇太夫の浮かべた涙は演技でも偽りでもない。
この瞬間が苦痛でしか無かった。




「……おやめ、くださいっ……」




か細い声で抵抗しても効果はない。
満更でもないと思ったのか男は決してその手を止めなかった。


紅薔薇太夫の瞳から次々に涙がこぼれ落ちる。
明日が待ち遠しく、遊女として生まれた自分が哀れとしか思えなかった。




「紅薔薇太夫っ……」



男の囁きに身の毛がよだつ。
全身が男を、今の状況を拒んでいた。
素直に抱かれることを拒むなど遊女失格だ。


これまでずっと快楽だけに身を任せ何も考えないようにしていた。
全てを偽ることが紅薔薇太夫にとっての人生だった。
今まで通り気高き遊女として、プライドを捨て、男に媚びていればそれでいい。



────────なのに、どうしても頭の中で銀時の姿がチラついた。
今はただ、銀時と話をするだけのあの時間が恋しかった。




「……紅薔薇太夫?」




「っ………」





その日、紅薔薇太夫の瞳から涙が止まることはなかった。

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八重菊(プロフ) - コメントをさせていただきます。もうホンマに、マジで泣きました。ここまで泣いた作品は初めてです.........!素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月15日 1時) (レス) id: 4b3ed537f2 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ものすごく心に残るお話でした。来世で必ず一人の女の子として、銀さんと幸せになってほしいと思いました。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 6dff351985 (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 45話読んだときは、「紅薔薇太夫!何で!?」って思った。でもその後の話を見てたら、何だか腑に落ちた。幸せなまま…… すごくいいお話でした。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 泣いた。いやめっちゃ泣いた。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - ハニーさん» コメントありがとうございます。愛着湧いてしまった夢主ちゃんだったからこそ、早く解放してやらなきゃな…という使命感に駆られてこうなりました笑 (2018年12月10日 3時) (レス) id: 95173b8ff8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠々亜 | 作成日時:2018年10月27日 14時

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