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【A】



汗ばんだ体が密着する度に現実へ引き戻された。
胸に貪りつく姿は見るに耐え難く、目を閉じずにはいられなかった。
男に抱かれながらも頭では違う男のことを思い浮かべる。


いつからだろう。
気づけば私は銀時様のことばかりを考えるようになっていた。


でも、私はその感情に気づいてはいけない。
あの感情は一度忘れ去った、いや、ボロボロに置き捨てられたはずだ。
もう二度とあんな思いをしたくない。


人はいつだって簡単に裏切る。
愛なんて全て幻想だ。
遊郭で育った私はそれを十分承知している。




「紅薔薇太夫…気持ちが良いのか?」




私の体に夢中になっている男は馬鹿げたことを言い出した。
気持ちが良い?
男に抱かれてそんな感情抱くわけがない。
全てが演技だ。


優しい言葉も、声も、表情も。
私は全て偽りでしかない。
この男はまんまとそれに踊らされているだけ。
ましてや苦痛に顔を歪ませただけなのに気持ちが良いと勘違いするなど実に愚かで滑稽だ。




「殿方様…きてっ……」




私は手を伸ばして男の唇に自身の唇を重ねた。
何も満たされることのない行為。
むしろ抱かれるほど私の心は冷めていく。


ここへ来てもう4ヶ月が経つだろう。
銀時様と出会っては一か月になる。
あぁ、最悪だ。
私の計画が狂ってしまう。


本来ならばそろそろ計画の準備に移ってもいい頃なのに、それが今日まで出来なかったのは全て銀時様のせいだ。
彼に出会ったことが全ての元凶だ。


今更抱かれることを苦痛だと感じるのも…
あの頃の感情を思い出させるのも…




「紅薔薇太夫…?」




「……………」




私は男の上に乗りかかった。
男を見下ろし決意する。
私は紅薔薇太夫、吉原一の花魁だ。


何も変わらない。
これまで通り全てを作ればいい。
そして邪魔者は────────消してしまえばいい。

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八重菊(プロフ) - コメントをさせていただきます。もうホンマに、マジで泣きました。ここまで泣いた作品は初めてです.........!素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月15日 1時) (レス) id: 4b3ed537f2 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ものすごく心に残るお話でした。来世で必ず一人の女の子として、銀さんと幸せになってほしいと思いました。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 6dff351985 (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 45話読んだときは、「紅薔薇太夫!何で!?」って思った。でもその後の話を見てたら、何だか腑に落ちた。幸せなまま…… すごくいいお話でした。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 泣いた。いやめっちゃ泣いた。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - ハニーさん» コメントありがとうございます。愛着湧いてしまった夢主ちゃんだったからこそ、早く解放してやらなきゃな…という使命感に駆られてこうなりました笑 (2018年12月10日 3時) (レス) id: 95173b8ff8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠々亜 | 作成日時:2018年10月27日 14時

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