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【銀時】



「そろそろ休憩するか」




俺達は駅前のベンチに座った。
地上に来てまだ2時間くらいしか経っていないが、Aにとってはかなり疲れただろう。
心做しかいつもより顔色が悪い。




「………悪りぃな。たくさん付き合わせて」




「これくらいどうということありません」




Aは相変わらずプライドが高い。
あれだけの顧客獲得してるくらいだ。
決して弱音を吐かなかった。




「そろそろ帰るか。それに今夜もまだ仕事あるんだろ?」




「えぇ」




「もう殺すんじゃねえぞ」




俺の真剣な声と表情をAは横目で見た。
もちろん返事はなし。
もしこれ以上の犠牲が出たのなら確実にこの女は百華によって殺される。




「にしてもお前その口紅似合ってんな。やっぱ俺の目利きすげぇ」




「……ありがとうございます」




Aはなんやかんや口紅を受け取ってくれた。
かなり渋ってたが俺の勝ちだ。
俺は立ち上がりAの手を引いた。




「行くか」




振りほどかれなかったことに安心した。
俺達は肩を並べて歩き出す。
なんつーか、複雑な気分だった。


Aを吉原へ帰すというよりは、まるで逃げた鳥を鳥籠へ戻すような感じだ。
Aを遊郭という鳥籠へ。




「銀時様」




Aが自ら話しかけるとは意外だった。
俺はそれを悟られないようごく自然に返事をする。
Aは遠い目をしながら言った。




「もう地上へ行くことはお断りします」




やっぱりお気に召さなかったようだ。
ま、人生の大半を遊女として生きているAには当然のことだ。
だがそりゃ残念と返す前にAは言った。




「ですが、銀時様の話す地上の話はなかなか興味深いものです」




思わずAの顔を凝視してしまった。
Aはポーカーフェイスで何を考えてんだか一切分からねぇ。
けどまあ、少なくとも"俺の話"は気に入ってるみたいだ。




「また明日、たくさん話してやらァ」




Aは小さく頷いた。

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八重菊(プロフ) - コメントをさせていただきます。もうホンマに、マジで泣きました。ここまで泣いた作品は初めてです.........!素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月15日 1時) (レス) id: 4b3ed537f2 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ものすごく心に残るお話でした。来世で必ず一人の女の子として、銀さんと幸せになってほしいと思いました。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 6dff351985 (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 45話読んだときは、「紅薔薇太夫!何で!?」って思った。でもその後の話を見てたら、何だか腑に落ちた。幸せなまま…… すごくいいお話でした。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 泣いた。いやめっちゃ泣いた。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - ハニーさん» コメントありがとうございます。愛着湧いてしまった夢主ちゃんだったからこそ、早く解放してやらなきゃな…という使命感に駆られてこうなりました笑 (2018年12月10日 3時) (レス) id: 95173b8ff8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠々亜 | 作成日時:2018年10月27日 14時

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