検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:216,248 hit

20 ページ20

【銀時】



甘味処を出た俺達は商店街に向かっていた。
俺は前もって調べておいたコスメショップに立ち寄った。
ここに来る客はほとんどが金持ちだ。
それだけ高い化粧品が置いてある。


日輪が費用を出すと言ってくれたがここは敢えて俺の懐から出したかった。
今日はAに似合う口紅をプレゼントする予定だ。




「A、どうだこの口紅」




Aはため息をついた。
口紅など腐るほどある、そう言いたげだった。




「んな渋った顔すんなって。ほら、好きなの選んでいいぞ」




「結構です」




まじでいらねぇって顔してるはこの女。
Aはかなり客から貢がれてるため口紅なんてざらに貰えるだろう。
けどこいつは大体のモノを処分するらしい。


いや、そもそも一切身につけない。
一晩限りの甘い夜を過ごしたらそれで終わりだ。
俺が前にあげたかんざしも例のごとく日輪にやっちまったらしいし。


けど俺は引かねぇぞ。
俺が選ぶっつったら選ぶんだ。




「店員さん、こいつに似合ういい感じの色探してもらってもいいですかね」



「強情な人ですね。迷惑だと言っているんです」



「こちとら迷惑だと分かってて言ってんだよ」




俺達のやりとりに店員のおばさんはほくそ笑んだ。
そしてAの顔をまじまじと見つめる。




「まあ、本当にお綺麗な方ですわね。肌も白くぷるっとした唇で羨ましい限りですわ」




何万回って聞いてるだろうがさすが吉原一の花魁だ。
完全にビジネスモードオン。
あの見え透いた演技をし始めた。




「お褒め頂き光栄です」




「こんな素敵な奥様をお持ちで旦那様も鼻が高いでしょうね」




うんうん、それな。
じゃねぇよ。
俺達はどうやら夫婦だと思われてたらしい。


その言葉は遊女に対して一番禁句だ。
すかさず訂正しようとしたが俺よりも先にAが答えた。




「彼は主人ではありませんよ」




「まあそうでしたの?!それは大変失礼致しました」




「ですが、わたくしの大切な方です」





Aはそう言って俺の顔を見た。
Aの表情は店員には見えていない。
だから声だけ聞けば微笑ましいだろう。



────────実際、俺に向けられたその目は殺意そのものだった。
俺はどうやらAの"獲物"らしい。

21→←19



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (324 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
490人がお気に入り
設定タグ:坂田銀時 , 銀魂 , 花魁
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

八重菊(プロフ) - コメントをさせていただきます。もうホンマに、マジで泣きました。ここまで泣いた作品は初めてです.........!素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月15日 1時) (レス) id: 4b3ed537f2 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ものすごく心に残るお話でした。来世で必ず一人の女の子として、銀さんと幸せになってほしいと思いました。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 6dff351985 (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 45話読んだときは、「紅薔薇太夫!何で!?」って思った。でもその後の話を見てたら、何だか腑に落ちた。幸せなまま…… すごくいいお話でした。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 泣いた。いやめっちゃ泣いた。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - ハニーさん» コメントありがとうございます。愛着湧いてしまった夢主ちゃんだったからこそ、早く解放してやらなきゃな…という使命感に駆られてこうなりました笑 (2018年12月10日 3時) (レス) id: 95173b8ff8 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:瑠々亜 | 作成日時:2018年10月27日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。