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【NORMAL】



銀時と紅薔薇太夫が無言のまま見つめ合ってはや10分が経とうとしていた。
沈黙を先に破ったのは銀時だった。




「………もう殺さねぇって約束したよな?」




銀時の重い一言に紅薔薇太夫は目を細めた。
紅薔薇太夫の視線の先は銀時の首だった。
その鋭い眼差しには一瞬だけ殺意が感じられた。




「殺したい衝動が出たなら俺にぶつけろ。これ以上犠牲を出すな」




「随分とお優しいことを仰るのですね」




挑発的な口ぶりだった。
また紅薔薇太夫の口角が上がりそこにいた遊女は"悪女"そのものだった。




「契約への忠義だけはあると思ったんだがな」




「遊女に忠義などあるとお思いで?」




「あぁ」




銀時はきっぱりと答えた。
そしてゆっくりと立ち上がり紅薔薇太夫の正面に座り直す。
紅薔薇太夫の首筋には青々とした痕が残っていた。


昨晩"付けられた"ものだろう。
まるで俺の物だと言わんばかりの独占欲が窺えた。
銀時は懐からスカーフを取り出した。
それを紅薔薇太夫の首にかける。




「ほら、これ巻いとけ」




「………これは日輪様のものでは?」




「今日貰ったんだよ」




紅薔薇太夫は抵抗しなかった。
案外すんなりと受け入れスカーフを首に巻く。
銀時はその様子を見て内心ホッとした。




「さてと、んじゃ行くぞ。今日は特別に外出許可を取ってんだ」




「外出許可?」




きょとんとした紅薔薇太夫の姿は初めて見た。
いや、これまで紅薔薇太夫からは多くの表情が出なかったのだ。
一瞬だけ表した素の姿に銀時は安堵する。




「そのまんまの意味。吉原に来てから一度も地上へ出てねぇんだろ?つかその前の遊郭にいた時もあまり出たこと無かっただろ」




────────日輪の言う通りだった。
紅薔薇太夫の瞳からさらに光が消えた。
地上へ出ることを躊躇う遊女は決して珍しい話ではない。


だが紅薔薇太夫は違う。
躊躇うというよりも────────絶望に満ちた、そんな瞳だった。

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八重菊(プロフ) - コメントをさせていただきます。もうホンマに、マジで泣きました。ここまで泣いた作品は初めてです.........!素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月15日 1時) (レス) id: 4b3ed537f2 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ものすごく心に残るお話でした。来世で必ず一人の女の子として、銀さんと幸せになってほしいと思いました。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 6dff351985 (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 45話読んだときは、「紅薔薇太夫!何で!?」って思った。でもその後の話を見てたら、何だか腑に落ちた。幸せなまま…… すごくいいお話でした。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 泣いた。いやめっちゃ泣いた。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - ハニーさん» コメントありがとうございます。愛着湧いてしまった夢主ちゃんだったからこそ、早く解放してやらなきゃな…という使命感に駆られてこうなりました笑 (2018年12月10日 3時) (レス) id: 95173b8ff8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠々亜 | 作成日時:2018年10月27日 14時

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