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【NORMAL】




銀時は盛大にため息をついた。
路地裏に転がった死体を見て頭を掻く。
周りでは百華が後始末をしているところだった。




「すっげぇ無残な死体だな。滅多刺しにされてやんの」




死体を覗き込む銀時を月詠は横目で見た。
月詠はまるで誰かに警戒しているように小声で話した。




「もう紅薔薇に会いに来たのか」




「あぁ、今日は早めに来いって言われてんだよ」




「そうか…」





月詠は死体に目を向けた。
目玉をくり抜かれ、身体は数十箇所にも及ぶ刺傷があった。




「……すっげぇ恨みでもあんのかねぇ」




銀時の呟きに月詠は頷いた。
見るからに酷く悲惨なあり様だ。
そこには怒りや悲しみも残っているように感じた。




「んじゃ俺ァそろそろ行くわ。酒飲んで雑談してさっさと帰ろ」




「待て銀時」




月詠の言葉に銀時は足を止めた。
振り返ることは無かったがその耳は確かに月詠に向けられている。
月詠の緊迫した緊張感がひしひしと伝わった。




「わっちは紅薔薇を信用しておらん。身の危険を感じたらすぐにわっちに知らせろ」




「……なに、守ってくれんの?」




「ちがっ……わっちはただ、これ以上犠牲を増やしたくn────」




「あいつがやったって、そう思ってるんだよな?」





銀時はゆっくり振り返った。
月詠は思わず口を閉ざす。
────────読めなかった。
銀時の表情に頭が真っ白になる。


微笑んでいるのか、怒っているのか、悲しんでいるのか。
今の銀時からは何も読み取れない。




「………主も、紅薔薇に惚れているのか?」




紅薔薇太夫は多くの人々を魅了する。
それは男だけでなく女もだ。
来たばかりの紅薔薇太夫に憧れを抱く遊女は後を絶たない。


だからこそ、銀時も惚れてしまったのかと月詠は思った。
紅薔薇太夫に惚れたら最後────────必ず死を迎えると、月詠は知っている。




「馬鹿言え。この俺があいつに惚れるかよ」




ただ、と銀時は言った。
だがその先の言葉は月詠には届かなかった。

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八重菊(プロフ) - コメントをさせていただきます。もうホンマに、マジで泣きました。ここまで泣いた作品は初めてです.........!素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月15日 1時) (レス) id: 4b3ed537f2 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ものすごく心に残るお話でした。来世で必ず一人の女の子として、銀さんと幸せになってほしいと思いました。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 6dff351985 (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 45話読んだときは、「紅薔薇太夫!何で!?」って思った。でもその後の話を見てたら、何だか腑に落ちた。幸せなまま…… すごくいいお話でした。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 泣いた。いやめっちゃ泣いた。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - ハニーさん» コメントありがとうございます。愛着湧いてしまった夢主ちゃんだったからこそ、早く解放してやらなきゃな…という使命感に駆られてこうなりました笑 (2018年12月10日 3時) (レス) id: 95173b8ff8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠々亜 | 作成日時:2018年10月27日 14時

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