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【NORMAL】




男は襦袢の上から腰に両手をそっと添えた。
身体のラインを確かめるように腰の骨の上から肋骨辺りまでをゆっくり上下になぞる。
引っ張られた裾も上下して、上がるたびに顕にされた。




「紅薔薇太夫よ……今宵はそなたに大事な話をしたかったのだ」




男は紅薔薇太夫の腰に手を回し、自身の膝の上に座らせた。
紅薔薇太夫の潤んだ瞳が男を捉える。
吸い込まれそうな瞳に男は目を逸らした。


紅薔薇太夫の太ももに当たる硬い感触。
紅薔薇太夫がゆっくりと手を滑らせると男は小さく声をあげた。




「っ、紅薔薇太夫……まだ、だめだ……」




「大事なお話を聞かせてくれるのでしょう…?」




「ああ……だがっ……」




この男がなにを言わんとしているのか紅薔薇太夫には分かっていた。
この男は今日で2回目の対面である。
以前から男の好意には気づいていた。


遊女に惚れる男ほど哀れなものは無い。
だからこそ、"最後の瞬間"だけは夢を見せてやろうと思った。
男の荒い息遣いに合わせて紅薔薇太夫の手も加速していく。




「弥右衛門様……どうか、わたくしの熱を感じてください…」




「あっ……んんっ、……くっ…!!!」




大きく男の体が脈打った。
紅薔薇太夫が抱きしめるとそのままゆっくりと倒れ込む。
男の唇が紅薔薇太夫の胸に触れた。


紅薔薇太夫を押し倒した男は顔を赤く染め、起き上がった。
そして紅薔薇太夫の頬に手を添える。




「……紅薔薇太夫、ここから逃げぬか?」




「え?」




紅薔薇太夫の演技に男は気づいていなかった。
目を見開く紅薔薇太夫を見て、自分こそが紅薔薇太夫を救えるのだと確信した。
男は両肩を掴み熱い視線を送る。




「そなたのような女性がここにいてはならぬ。俺と暮らそう!さすれば必ずそなたを大切にしよう!」




「……弥右衛門、様…」




「迎えを忍ばせている。俺と一緒に来てくれるか?」





この瞬間、男は吉原の掟に背いた。

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八重菊(プロフ) - コメントをさせていただきます。もうホンマに、マジで泣きました。ここまで泣いた作品は初めてです.........!素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月15日 1時) (レス) id: 4b3ed537f2 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ものすごく心に残るお話でした。来世で必ず一人の女の子として、銀さんと幸せになってほしいと思いました。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 6dff351985 (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 45話読んだときは、「紅薔薇太夫!何で!?」って思った。でもその後の話を見てたら、何だか腑に落ちた。幸せなまま…… すごくいいお話でした。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 泣いた。いやめっちゃ泣いた。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - ハニーさん» コメントありがとうございます。愛着湧いてしまった夢主ちゃんだったからこそ、早く解放してやらなきゃな…という使命感に駆られてこうなりました笑 (2018年12月10日 3時) (レス) id: 95173b8ff8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠々亜 | 作成日時:2018年10月27日 14時

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