[if.SAO] 託された願いだけ持って。……キミの傍で、嘘をつく.2

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「酒をアイテム欄に寝かせてても、味が良くなるわけじゃないしな。俺、知り合い少ないから、開ける機会もなかなかないし……」

おどけたようにキリトが肩をすくめるのを見て、シリカも笑う。
そうして暫く無言でみんなが各々の飲み物をすすり────



「なんで…………あんな意地悪言うのかな…………」


シリカが思わず、というように呟いた。
もう空になったカップを、それでも惜しむみたいに両手で包み込んで。

…………キリトが、真顔になって、そっと口を開く。

「君は、大規模ネットゲーム(MMO)は、SAOが……？」
「初めてです」
「そうか。──どんなオンラインゲームでも、キャラクターに身をやつすと人格が変わるプレイヤーは多い。善人になるやつ、悪人になる奴……それをロールプレイと、従来は言ってたんだろうけどな」

そう、そもそもは“それ”が……現実世界の自分とは違う人間でいられることが、MMORPGの醍醐味のひとつでもあった。
…………それが良いことか悪いことかは別として(個人的にはPKに傾くような奴に賛同したくはないが)、そういう楽しみ方をすることも肯定されていた。



(…………でも、)

「でも、俺はSAOの場合は違うと思う」



キリトの目が鋭くなる。
…………私も苦い想いを噛みしめていた。

「今はこんな、異常な状況なのにな……。そりゃ、プレイヤー全員が一致協力してクリアを目指すなんて不可能だってことはわかってる。でもな、他人の不幸を喜ぶ奴、アイテムを奪う奴、──殺しまでする奴が多すぎる」

悪事を好んで働くようなスタイルは、ゲーム世界が一時的なものだったから許されたことだ。

もちろんPKなんてされたら気分が悪いし、嫌だが、それでも現実(リアル)には何の影響もない。
本当に殺されるわけじゃない。
多少面倒だし腹も立つが、またログインし直せばいいだけの話。

…………ても、ここはSAOなのだ。

茅場の言葉を借りるなら、
クリア以外に脱出方法のない牢獄。
帰る術のないプレイヤーたちにとって、ここは第2のリアルも同じ筈なのに。

(……ここでの死は、“現実の死”なのに)

それは私だけが知っている真実だけど、これだけ長い間閉じ込められていればみんな気づいている。

────“ナーブギア”を外せばいいだけなら、こんなに外部からの助けが遅れるわけない。

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