[if.SAO] 託された願いだけ持って。……キミの傍で、嘘をつく.2

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「そうか、リズは職人クラスだもんな。ダンジョンに潜ってると、行きずりのプレイヤーと野良パーティー組んで野営するとか、けっこうあるよ。なぁ、A」
「…………うん。お互い、その方が効率がいいからね」
「そうなんだ。ねぇ、聞かせてよ。そういうダンジョンの話とか」
「え、う、うん。そんな面白いもんじゃないと思うけど……。おっと、その前に……」

キリトは空になったカップを回収すると、手鍋と一緒にウィンドウに放り込んだ。
それから手早く武装を解除し、私が敷いておいた野営用ベッドロールの方に行きながら、私たちを手招きする。

「どうせだったら、こっちで寝転がりながら話そうぜ。その方があったかいしな」
「え、う、うん……」

戸惑いながらもリズベットが続き、私に至っては気にした方が負けだと割りきっているので無言で従う。

言い出しっぺのキリトが真ん中。
左にリズベット、右に私。

「さっきの話、してよ」
「あぁ、うん……」

そうしてキリトは語り始めた。
両腕を頭の下で組んで、その時を思い出すようにゆっくりと。

迷宮区で、MPK──故意にモンスターを集め、他のプレイヤーを襲わせる悪質な犯罪者の罠に引っ掛かったこと。
攻撃力は低いのに異常に堅いボスと、交代で仮眠しながら丸二日も戦い続けた話。
それから、レアアイテムの分配をするために百人でサイコロ転がし大会をしたこと……。

その声に耳を傾けていると、私にもその時の情景が目に浮かぶような気がした。
いつの間にか、この世界が始まってから、こんなにも思い出が積み重なって。

ツラいばかりだったはずの途(みち)に、
キラキラと輝く宝石のような日々ばかりが降り積もっていく。


……手離しがたいぬくもりが、増えていく。


(──あぁ、どうして……)

こうも上手くいかない、と。
寝返りをうって二人に背を向ける。そのまま縮こまるように自分を両腕でかき抱いた。

ぼそぼそと聞き取れなかった二人の会話が、不意に鮮明になる。


「ね、キリト。お願いがあるんだ」
「──なんだよ。改まって」
「手、握って……？」


動揺する気配。戸惑いに満ちた沈黙。
けれどしばらくして衣擦れの音がしたから、キリトは言われた通りにしたんだろう。

自嘲するような笑みが唇の端に浮かぶ。
それなのに、頬を、意思に反して熱い雫が滑り落ちて。

(…………何を期待してたんだか)

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