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「それが、あんたらが俺に与えるダメージの総量だ。俺のレベルは78、HPは14500……さらに戦闘時回復(バトルヒーリング)スキルによる自動回復が十秒で600ある。何時間攻撃しても俺は斃せないよ」
「そんなの、ありかよ……ムチャクチャじゃねぇかよ……」
「そうだ。たかが数字が増えるだけで、そこまで無茶な差がつくんだ。それがレベル制MMOの理不尽さというものなんだ……!!!」
現実でどんな力を持っていようとも。
……ここでは“レベル”がすべて。
災厄が降りかかったとき、対処できるだけの“力”がなければ─────。
(…………無様に殺されて、泣きをみるだけだ。あの人のように)
自分にはできない、と。
泣きながら代わりを務められる人を捜すしかなかったあの人のように。
────────“私”のように。
「チッ」
不意にロザリアが舌打ちすると、腰から転移結晶を掴み出した。
宙に掲げ口を開くが…………その時にはもうすでに、ぶん、と空気を震わせる音とともにキリトが距離を詰めていた。
情けない悲鳴をもらし体を強張らせるロザリアの手からクリスタルを奪い、そのまま襟首を掴んでずるずると引き摺ってくる。
「は……離せよ! どうする気だよ畜生!!!」
「あんたら全員、コレで牢屋(ジェイル)に跳んでもらう」
喚くロザリアをぽいっと男たちの中央に放り、キリトが腰のポーチから青い結晶体を取り出す。
先程の転移結晶よりさらに色が格段に濃い。
「これは、俺に依頼した男が全財産をはたいて買った回廊結晶だ。黒鉄宮の監獄エリアが出口に設定してある。あとは《軍》の連中が面倒みてくれるさ」
「────もし、嫌だと言ったら?」
「全員殺す」
簡潔な答えに、賊たち全員が凍りつく。
「……と、言いたいとこだけどな。仕方ない、その場合はこれを使うさ」
そう言って、今度は小さな短剣を取り出す。
刀身が薄緑の粘液に濡れているようだ。
「麻痺毒だよ。レベル5の毒だから十分間は動けないぞ。全員コリドーに放り込むのに、そんだけあれば充分だ…………自分の足で入るか、投げ込まれるか、好きな方を選べ」
もう、誰も強がりを言うものはいなかった。
全員が無言で項垂れるのを見て、キリトは短剣を仕舞うと、濃紺の結晶を掲げて叫ぶ。
「コリドー・オープン!!!」
瞬時に結晶が砕け散り、空間に青い光の渦が出現する。
……肩を落とした賊たちが、ある者は毒づきながら、ある者は無言で、光の中に消えていく。
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moeka(プロフ) - 最近更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しいです。待ってます。 (2020年12月16日 20時) (レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶 - 15-4〜16-7までの流れが、主人公の葛藤と矛盾が鮮明に描かれていて心に刺さりました。この作品面白いので更新頑張ってください。応援させていただきます。 (2018年11月14日 20時) (レス) id: 10e431e9a6 (このIDを非表示/違反報告)
夢巫女 - シリアス大好きです。この二人がこのあとどうなるのか気になります。更新お忙しいと思いますが、頑張ってください。楽しみにしてます。 (2018年11月6日 21時) (レス) id: 6cc7262479 (このIDを非表示/違反報告)
コトノハ - この作品、私のどストライクな作品です!!もう更新してくれないのでしょうか?続き楽しみに待ってます! (2018年10月28日 14時) (レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
Kizuna(プロフ) - アリスさん、コメントありがとうございます!!!ヘ(≧▽≦ヘ)♪ そう言って頂けるととても嬉しいです…!前回更新からだいぶ長いこと時間があいてしまいましたが、またちょこちょこ書いていきますので、よろしくお願いします(*≧∀≦*) (2018年1月19日 14時) (レス) id: 62524f433b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kizuna | 作成日時:2017年4月9日 16時