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「良かった。ふたりともまだ居てくれて」
……そう言って近づいてきた美少女プレイヤーに、私とキリトは揃ってぽかんと口を開けることになった。
キリトが恐る恐る問いかける。
「……あの、どちら様ですか……?」
「何言ってるの、アスナよ」
「え」
言葉をなくす。私も同じ心境だった。
……よもやあのフードの下にこんな美人が隠れていようとは。
というかこの美しさは現実に存在するのか、というかしていいのか。神様は不公平だという言葉が心に突き刺さるレベルなんですが。
…………とか考えて私が泣きそうになっている間にも話は進んでいた。
「エギルさんと、キバオウから伝言がある」
「……何て?」
「エギルさんは、『二層のボス攻略も一緒にやろう』って。キバオウは『今日は助けてもろたけど、ジブンらのことはやっぱり認められん。わいは、わいのやり方でクリアを目指す』って」
「……そうか」
少しだけ、キリトの声が掠れた。
言葉の意味を反芻しているのだろう。あの場所で、二人だけが、気づいていたのだと。
……私も、そっと脳裏で繰り返した。
「それから、これは私の伝言。貴方、戦闘中に私の名前呼んだでしょ」
「……?」
水を向けられたキリトは戸惑っている。
「私、貴方に名前教えてないし、貴方のも教わってないでしょう? どこで知ったのよ」
「はぁ!!? え、まさか────」
思わず、といったように叫び声を上げたキリトが。
視界の端にあるパーティーメンバーの名前を読ませようとアスナの顔を固定するためにその頬に触れて…………。
ズキリ、と胸が痛んだ。
「なぁんだ……こんなとこに、ずっと書いてあったのね」
くすくす笑ったアスナが、改めてキリトを見つめる。
「ホントはね、キリト、貴方にお礼を言うために追いかけてきたの。私……この世界で初めて目指したいもの、追いかけたいものを見つけたから」
──その、強い視線に。
わかってしまった。
彼女の目指すもの。見つめる先。
願っている、“未来”。
(……ああ、敵わないな……)
きっとキリトには、アスナみたいな人が相応しいんだと思う。
美人で、純粋な想いだけで彼に向き合ってる。
──────でも、予感がしたんだ。
いつか、キリトこそが。
この世界を解放するのではないかという予感。
……そして、そうであるならば。
私の意思など関係なく、
キリトこそが私の“捜し人”で、私が必要とする存在だ。
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Kizuna(プロフ) - わあああすみません!!!ご指摘ありがとうございます(>o<") (2017年3月7日 14時) (レス) id: 62524f433b (このIDを非表示/違反報告)
ネムム(プロフ) - オリジナルフラグを外してくださいねー (2017年3月7日 13時) (レス) id: 2bd2d16489 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kizuna | 作成日時:2017年3月3日 20時