断片*1 ページ2
「さて、これでSAOのβテストも終わるわけだが……今日まで頑張ってくれたお礼に、Aにご褒美をあげよう」
彼は微笑む。
爽やかだけどどこか冷たく、瞳に面白がるような光を湛えて。
……これは絶対に何か企んでる。
じとーっと睨むが、気にした風もなく胸ポケットから写真を取り出す。
「Aがいつもβで一緒に遊んでいた、えっと、キリト君だったか。彼の、リアルの顔写真だ」
「!!? な、なんでそんなもの──」
「まあ、いわゆる研究の副産物というやつだ。ナーブギアの機能でひとつ確かめたいことがあって、それを確かめる過程で手に入った」
どこのかは言えないがデータベースにアクセスして、情報を抜いてきたんだ。
サラッと言う彼に目眩がする。
「捕まるよ!? 犯罪だよ!!?」
「バレなければ問題はない」
「そんなわけないでしょ、プライバシーの侵害だよ! だいだいナーブギアの何を確かめてたの?」
「それは秘密だ。そんなことより……」
いらないのかい?
と、これ見よがしにヒラヒラと写真をふってみせる悪党。
「気になるだろう? 現実(リアル)の彼がどんな人なのか」
「で、でも、詮索するのはマナー違反──」
「Aがわざわざ伝えなければ、キリト君は自分のリアルが知られているなんて夢にも思わないさ」
「…………」
「それにこれは単なる顔写真。詳細なプロフィールでも何でもない。これを見たところで現実の彼を探し出すことなど不可能だし、もう今日でβも終わってしまったんだから、どのみちキリト君とはこれっきりになるさ」
これっきり。
その言葉に胸を突かれた。
ハッとして背後の装置を振り返る。投げ出されたナーブギアが確かに創りだしていた世界は、もう消えてなくなってしまった。
「正規版で会おう、と約束はしても、本当にそうできるかはわからない。……βのデータは引き継がれないからね。キャラもIDも、何もかもわからないんじゃ、また偶然出逢えることに賭けるしかない」
だけど、それはどれくらいの確率だろう?
たとえば新しく始まる仮想世界のどこかですれ違っていたとしても。
……キミだと気づいて声をかけることができるだろうか。お互いに。
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Kizuna(プロフ) - わあああすみません!!!ご指摘ありがとうございます(>o<") (2017年3月7日 14時) (レス) id: 62524f433b (このIDを非表示/違反報告)
ネムム(プロフ) - オリジナルフラグを外してくださいねー (2017年3月7日 13時) (レス) id: 2bd2d16489 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kizuna | 作成日時:2017年3月3日 20時