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探していた。
私の目的を果たすために、必要な人を。
たとえそれが可能性でしかなくても。
『プレイヤーの諸君。私の世界へようこそ』
たった数時間前に知らされた現実。
はじまりの街の中央広場は大混乱だった。
でも、最初の衝撃が過ぎれば気づくはず。この世界で生き残るために必要な“力”と、それを得るための“最善策”に。
私は、その人物を探さなければ。
目的を果たすために。託された願いを、叶えるために。
「………………」
ふと、足を止めた。
人知れずはじまりの街を出てずいぶん経つ。周囲には誰の姿もない。一人きりだ。
……振り返った。
遠く見えるはじまりの街。
あそこではまだ混乱が続いているのだろうか。
私と違って、何も知らずにあの事実を知らされた人々が、そう簡単に冷静になれるものなのか?
いち速くあの街を抜けて、ここまで来ている人なんて────
「……なぁ」
心臓が止まるかと思った。
咄嗟に、腰の長剣を抜きながら飛び退く。
構えながら声のした方を見れば、黒髪の、線の細い顔立ちをした少年が立っていた。
「うわわわ待った! 違うんだ、敵じゃない!! ただ君も次の村に行くのかと思って────」
───その顔を見て、刹那、世界のすべてが止まった気がした。
無意識に唇からこぼれ落ちる、彼の、名前。
「キリト……?」
「え……」
その瞬間、私は後悔した。
キリトと呼んでしまったことを。
……これでは知らないふりができない。
長めの前髪の下で、柔弱そうな両眼が確信をもって見開かれる。
「まさか、その声。A……?」
…………探していた。
私の目的を果たすために必要な人を。その可能性を持つ人を、探していたんだ。
(………………でも、どうして、)
それがキミだったんだろう。
何故、また出逢ってしまったの。
(私は……これから…………ずっと)
目的を果たすために、キミに嘘をつき続けなきゃいけなくなる────
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Kizuna(プロフ) - わあああすみません!!!ご指摘ありがとうございます(>o<") (2017年3月7日 14時) (レス) id: 62524f433b (このIDを非表示/違反報告)
ネムム(プロフ) - オリジナルフラグを外してくださいねー (2017年3月7日 13時) (レス) id: 2bd2d16489 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kizuna | 作成日時:2017年3月3日 20時