番外編#6 初恋は実らない(1) ページ43
キルアside
落ち着かない空間に、ただAの啜り泣く声だけが谺響する。
彼此四十分程、俺はAの隣に腰掛けて背中を摩っている。
…何故だか俺は、無性に苛立っていた。
不意にフラッシュバックしたのは駆けつけた時に彼女が初めて呟いた言葉。
*
『クラピカが＿＿＿＿私の所為で…もう駄目かも。』
*
キルア「…はぁ。」
昔からお前らはそうだった。お互いの事ばっかりだ。
*
初めて目の前で零した涙。
変に小さく感じる背中。
長い闘いを想起させる、破れたワンピース。
覗いた白い肌。
キルア「＿＿＿ッ」
気付いてしまった。
謎の苛立ちの理由と胸に仕舞っていた思いを。
俺はずっと恋をしていたようだ。
……＿＿報われない恋を。
*
クラピカが倒れてから半年程。
偶然病室に居合わせたAが、呟いた。
「気付かないフリしてたのになんで言っちゃうかなぁ…。そう思わない？」
先程医師に告げられた余命宣告らしきものが堪えたらしい。薄らと浮かんだ涙が、それを示していた。
「それが医者の仕事だろ。」なんて釣れない返事をしながらも、内心は大きく揺れていた。
「ほんの少しだけ不安になってきちゃった＿＿＿なんちゃって…」
珍しく弱音を吐いたAの顔を見ると、何も知らずに眠ってやがる男の事が無性に苛立った。それと同時に今まで塞ぎ込んでいたはずの何かが溢れ出て、次の瞬間思っても見なかった言葉を口にした。
キルア「俺にしとけよ。」
「へ？」
彼女は今にも泣き出しそうだった表情を、困惑したそれに変えた。
…ごめん、A。
お前の事 困らせたかった訳じゃないんだ。
「本当だよね。キルアは器用だし、お金持ちだし、イケメンだし…＿＿＿でも、私にはクラピカしか居ないんだ。二年も待たせた責任もあるしね。」
ハナから分かってたんだ、俺がアイツに適う訳ねぇなんて。
だから、潔く病室を去ろうとした。
…でも＿＿＿＿＿＿
「＿＿本当にありがとう。」
そうやって真っ直ぐに言うもんだから、俺は踵を返して奴を抱き締めてしまった。
…くっそ、何時も調子狂わせやがって。
いっその事酷いこと言って追い出してくれればいいのに。
「キルア…？」
すっぽりと収まった小さい身体が尋ねた。
ほのかな甘い香りに名残惜しさを感じながら、そうっと腕の力を抜いた。
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あ - 本当に良い作品でした…名作。。完結お疲れ様でした。2024年ですが (1月16日 1時) (
レス) @page40 id: b41e70529d (このIDを非表示/違反報告)
ありす - もう泣きましたよー！素敵な物語ありがとうございました。お疲れ様です (2022年7月15日 0時) (レス) @page49 id: c887a79125 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - ひぃさん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけたようで何よりです(^^) お返事遅れてしまいすみません。 (2022年7月8日 0時) (レス) @page49 id: a48c4b505b (このIDを非表示/違反報告)
ひぃ(プロフ) - 読んでいく度に続きが気になって夜更かししてまで読んでました笑めっちゃ面白かったです！！これが初めての作品だと…？！文才、めっちゃありましたよ…！今更ですが、完結お疲れ様でした！かにかまさんの他の作品に行ってきます！ (2021年5月28日 18時) (レス) id: 21a845e247 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - るきさん» 素敵なコメントありがとうございます。最近はH×Hに疎遠になってしまっているのですが、いつか機会があったらまた書きたいなと思っています。気長に待っていただけたら嬉しいです(^^) (2020年11月18日 10時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かにかま | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/0660ea0a061/
作成日時：2019年12月15日 7時
