答え合わせ ページ28
*
区民公園の辺り、
たまを見つけたその公園の辺りで二人は止まった。
右手に掴んだ華奢な手首はぶらりと下がって、肩で苦しく息をして。
別に無理をさせたかった訳じゃないのに。どうして上手くいかないんだろう。格好つかないんだろう。
走ったところで気分は晴れず、三郎はボソリと呟いた。
「何でいつもいつも、選ばれるのはアイツなんだよ………」
「はぁ」
「いつも振り回されるのは僕じゃん。………どんなに頭をつかってもお前が導き出すのは予想外の答えばっかりで、もう訳分かんないよ。」
パッ、と手を離す。
漸く自由の身になったA。
しかし、彼女は離れなかった。
やけに弱気な彼を一人にしたくなかったのだ。
そりゃ、助けて貰った恩があるし。
それに彼のことが……いや、何でもないけど。
「何の話」
「これだから物分かりの悪い馬鹿は困るね。」
「だから言ってくれなきゃ分かんないじゃん。どうして怒ってるの。」
「………………………、……………好き、なんだ。」
久しく視線があったのは林檎みたいに真っ赤な顔。
いつも冷静な彼がそう取り乱すのは珍しくて、気付いたらそれが伝染していた。
置物のようにパクパク口を動かすだけのAを、三郎は少し驚いた顔をして見つめる。
あぁ、なんだ。あれは勘違いだったのか。そして、もしかしなくても、この蟠りは独りよがりなものじゃない。
口にしていないのに不思議だ。次第に彼女の思っていることが伝わってくるような気がした。
「好きです。」
「………うん」
「好き」
「はい」
「Aのことが好きです」
「もっ、もういいよ!分かったってば!!」
三郎は益々赤面するAを面白がるように覗き込む。
対して彼女は必死に目線を逸らしながら、さっきまで真っ赤だった癖になんでよ……と何処か納得のいかないそれを抱えていた。
.
暫くして、呼吸も拍動も落ち着いた頃、Aは口を開いた。
「…………………私も、好き」
「何が?」
「あなた」
「誰?」
「サブロウヤマダ」
「はは、何で外国人みたいに言うの」
久々に馬鹿笑いする三郎。不本意ながら、キュンとしてしまう。
あぁ、しかめっ面しかしていなかった君だけど、いつの間にかこんなにも大っぴらに感情を見せてくれるようになったんだね。
Aも釣られて笑いだす。
通り掛かった買い物帰りの主婦が、彼らのことを不思議そうに見ていた。
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あぽろ(プロフ) - 描いて下さりありがとうございます…(?)めちゃくちゃいい作品で、びっくりしました…! (2021年5月1日 5時) (レス) id: a236361d3f (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - 茉莉さん» コメントありがとうございます。わー、そうなんですね!茉莉さんの推しのイメージを壊さないように頑張ります(^^) (2020年11月27日 19時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
茉莉 - 更新お疲れ様です!!強盗役のラップ私も好きですwwしかも三郎くん私の推しなんで我得でしかない…//(キモい) 応援してます〜!! (2020年11月27日 17時) (レス) id: 78857a4183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かにかま | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/0660ea0a062/
作成日時:2020年11月26日 1時