検索窓
今日:24 hit、昨日:1 hit、合計:187,319 hit

〈4〉過去 ページ4

彼は友達から藤ヶ谷や太輔と呼ばれていた。


心の中で俺も彼の事を“藤ヶ谷”と呼んでいた。


名前で呼べるのは、特別な人だけの様な気がして、
友達でも何でもない俺は、
とても呼ぶ事なんて出来なかった。




でも許されるのならば一度だけでいい


『太輔』と呼んでみたい‥




なんて思っていた、ある日の放課後だった。


誰もいない廊下を、
図書室に行く為の階段に向かい歩いていると、
階段の少し前にある職員室から藤ヶ谷が出てきた。


思わず足を止め、
少し前を歩く藤ヶ谷の後ろ姿を見つめる。


ズボンのポケットに両手を入れ、少し気だるそうに歩く後ろ姿。


少し開いていた窓から入る風が、藤ヶ谷の後ろ髪をフワリとなびかせる。


その風に誘われる様に、藤ヶ谷が立ち止まり窓の外を見た。


その横顔が凄く綺麗で、
なぜだか泣きそうになった。




このまま振り返らなくていい

このまま俺になんて気付かないでいい

このまま少し離れた距離でいい

…あと少しでいい

この二人だけしかいない廊下で、藤ヶ谷を見ていたい。





北「‥たいすけ」



それは、無意識だった




思わず漏れた小声にハッとする。

大丈夫、この距離だ

聞こえるわけが無い


でも、


聞こえるわけなんてないのに、
急に立ち止まり振り返る藤ヶ谷と、ほんの数秒目が合った‥


藤ヶ谷は、すぐにまた前を向いて歩き出したけど、
俺はその場からしばらく動く事が出来なかった。




体の震えと波打つ胸の鼓動が止まらなかった。



そして、
泣きだしそうなくらいの幸福感に包まれた。




そんな自分に気付いた時、




衝撃と寒気が止まらなかった‥

〈5〉過去→←〈3〉過去



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (331 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
321人がお気に入り
設定タグ:藤北 , BL
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

いろ果(プロフ) - もえさん» もえさん、初めまして♪コメントありがとうございます!ドキドキして読んで頂けた様でとても嬉しいです(o^^o)続きでは無いのですが、近々藤ヶ谷さんsideも書いていきたいなぁと思っていたので、その際もお付き合い頂ければ幸いです☆彡 (2017年1月23日 7時) (レス) id: 8fe91de33d (このIDを非表示/違反報告)
もえ(プロフ) - はじめまして!こんばんは!完結おめでとうございます。すごくドキドキしながら読んでました!最後はお二人の気持ちが通じてよかったです(^-^)よかったらこのお話の続き書いて下さい!これからも頑張って下さい♪ (2017年1月21日 23時) (レス) id: 3266ef2099 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:いろ果 | 作成日時:2016年9月17日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。