chapter12 ページ13
木目調のテーブル、綺麗に磨かれたコーヒースプーンにアンティーク調のコーヒーカップ。コーヒーポットから噴き上がっている湯気が、低い天井に当たってゆっくり店内に広がっていく。ここのカフェは黒尾さんチョイスのお店だった。
渋谷にこんな穴場なカフェがあるんだなと関心しながら、デザートのフルーツタルトを口に運ぶ。
「園山は最近楽しい?」
「楽しい…まあ人生たのしんでますよ。仕事も何だかんだ言って楽しいですし」
「俺は園山とこうして食事する時間が楽しいと思ってるけど、園山は?」
急に黒尾さんからそんな質問が返ってくるなんて思いもしないから、持っていたフォークが手からゆっくりとお皿に置かれる。
─どの基準で楽しいなんて正直分かってない。そもそも変わらなきゃいけないってことに本当には分かっている。黒尾さんは少し喰えないけど、優しそうだし大丈夫かもと思える。これから頑張って恋をして、この人に全てを捧げて…心に触れられて…いつか傷つくかもなんて…
「…私は」
口を開こうとしたとき、何故かあいつの顔が浮かんだ。
「園山?」
名前を呼ばれはっとしたタイミングで次はスマホの通知が鳴った。所長からのないとは思うが緊急だったら大変なので、黒尾さんに断りを入れスマホを確認する。
書かれていた内容はこうだった。「赤葦って人が園山さんに会いに来たよ。今はお昼に行ったばかりだから帰ってこないって言ったが、連絡がつかないようならまた来ますとことずてを頼まれた。はやく連絡してやれ」と。
自然とスマホを握る手が震える。それを黒尾さんは少し驚いたように私を見た。
───詰んだ。
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れーと - こういうお話大好きです。最後まで頑張ってください。 (12月10日 16時) (レス) @page13 id: 18437b55a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒猫 | 作成日時:2023年8月24日 14時