No body

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＃或る男の独白１ページ21

「ほら、A、ご挨拶して。」

『こんにちは。
　今日からよろしくお願いします。』

　俺が九歳の時、Aと知り合った。

　俺の家には昔からの家政婦がいて、
　その孫がAだった。

　あいつの家は貧乏で、
　両親は仕事で常に家に居ない。

　そのためAは祖父母の家に預けられ、
　祖母の家政婦の仕事の手伝いをしていた。

　当時、関わることの許された同い年は
　Aしかいなかった為、
　俺はすぐAと仲良くなった。

　そして、俺たちが十二歳になると、
　Aの祖母は他界した。

　代わりに誰を家政婦にするのか。

　そんなことは話し合うまでもなく、
　Aに決まった。

　Aは家政婦として、
　給料を貰いながら、家で働いた。

　家の掃除も料理も、全てAが行った。

　プルルル。

「Aか。
　なんかあったのか。」

『いや、今スーパーにいるんだけど、
　今日の夕飯何がいい？』

「･･･暖かくねえ蕎麦が食いてえ。」

『え、普通に冷たい蕎麦って言えよ。
　めんどくさい。
　なんかムカつくから今日温かいうどんね。」

　ツーー･･･。

「･･･いや、なんでだ。」

　こういう会話も、ままある。