脱出 ページ45
バサリ、長い髪を切った。
街へは王族の仕事で何度か出向いているので、顔を覚えられてると思った。
身に付けている王家の証となるものと服も、全て脱ぐ。
そして、海の中でも無事なよう個包装のキャンディを何個か、そして少しのお金をハンカチに包んで持つ。
ほぼ下着の状態で、私はバルコニーの手すりを乗り越える。
日は傾いている。ほとんど暗く、もうじき何も見えなくなるだろう。
風が冷たい。
『…どうか、凍死する前に街まで辿り着けますように』
胸の前で手を握る。そして、
タンーーーッ
ーー
ー
ボチャンーーー……ッ
私は、海へ飛び降りた。
ーー
ー
〜太宰side〜
「やぁ、気分はどうだい?」
狭い牢獄に閉じ込められている哀れな人魚。陸に上がったのが間違いだったね。
「…何しに来やがった」
「Aが面会に来たらしいじゃないか。妬ましいねぇ。どうやら彼女は弱い者に肩入れしてしまうようだ」
”彼女と何を話した。“
声のトーンを落として笑みを消す。
彼女に執着する中也のことだ。また何か脅すようなことを言ったのかもしれないし、弱っているとはいえ海を操る力は微力ながら残っている。安心はできない。
中也はつまらなそうに私の顔を見てそっぽを向いた。
「手前みてぇな野郎と話すことは何もねェよ。クソ野郎の顔なんざ見たくねェな」
「私だって好きで君に会いに来た訳じゃないさ。彼女に何もしてないだろうね」
「ハッ、むしろ俺が脅されてるようなもんだ」
そう言うと、中也が挑発的な目を向けてきた。…光の宿った、嫌な目だ。
「“中也は私を貰ってくれるんでしょ!?私を置いて勝手に死んじゃ駄目!”…だってよ?俺はどうやら、まだ死ねねェみたいだな?」
「!」
…彼女が、そんなことを…?
じゃあ、一度私の手元に来たというのに、また中也の方へ……?
いや…、中也を死なせないために彼女が鼓舞しただけ…
そこまで考え、嫌な予感がした。
「まさか…ッ!!」
急いで彼女の部屋へ走る。
Aが中也を助けようとするのは目に見えていた。だからこそ彼女の父親の協力のもと、城の警備を厳重にさせ、浜辺にも降りられないようにした。
出口はどこにも無いはず。
ーバタンーーーッ!!
「A…ッ!!?」
部屋は空で、空いた窓から冷たい風が吹いていた。
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ヨモギ雲(プロフ) - チョコさん» こんにちは、コメントありがとうございます!4期見ています!出番が少ないながらも、相変わらず中也さんかっこいいですね…!✨ (2023年3月30日 23時) (レス) id: 8cd691db0d (このIDを非表示/違反報告)
チョコ - この話し面白くて見てます!そういえば、文スト4期始まっていますよ!! (2023年3月21日 13時) (レス) @page25 id: d38db6c248 (このIDを非表示/違反報告)
ユエ - こちらこそ返事ありがとうございます。作者様のペースで大丈夫です。今後も期待しています! (2021年6月29日 18時) (レス) id: 007fbd0124 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ雲(プロフ) - ユエさん» コメントありがとうございます!ダラダラ更新で本当に申し訳ないです(汗)頑張ります! 7月からでしたっけ…?一期がまた見られるらしいですね、楽しみです! (2021年6月29日 0時) (レス) id: 4c88579f44 (このIDを非表示/違反報告)
ユエ - いつも楽しませてもらってます。そういえば文ストの再放送がやるみたいですよ。 (2021年6月28日 7時) (レス) id: 007fbd0124 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨモギ雲 | 作成日時:2021年1月22日 13時