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「この時間は保健室で休もっか。教室戻れそうだったら次の時間から戻ろう」
「はい」
「大我は〜？」
「ここにいる」
「オッケー」
「先生ちょっと職員室行ってくるけど2人で大丈夫そう？」
「俺は大丈夫」
「北斗くんは？」
「…薬も飲んだし大丈夫だと思います」
「じゃあ保健室で待っててね〜」
少し心配そうな顔をして出ていったジェシー先生を目線だけで見送って、それからまたすぐに俯いた。
「北斗ってどこから転校してきたの？」
それまでじっと黙っていた彼がふと、そう言った。どうやら俺が自己紹介をした時点で既に彼は話を聞いていなかったらしい。
「東京だよ」
「じゃあ都会っ子だ」
「…それは分からないけど」
「東京の学校はやっぱり進んでる？」
「…それもどうだろう。前に通っていた所は中学受験をして入った所だから進んでいただろうけど他はなんとも」
「へえ、北斗頭良いんだ」
「京本君は、」
そこまで喋ってハッとした。無意識のうちにこんなに自分のことを晒してしまうなんて。別にそれが嫌と言うわけじゃないけど、ただそこまで言える自分に驚いていた。初めて話した割にはテンポのいい、話しやすい感じがした。
「君なんて付けなくていいよ、呼び捨てで」
「じゃあ、京本…」
「そっちか。ふつうみんな下の名前で呼びたがるんだ。東京はそうなの？」
「…何でもかんでも東京だからと思われるのは少し困るな。田舎ではみんな下の名前で呼び合うものなの？」
ただ、当初に思ったさっぱりとした物言いの印象は少しズレていたのかもしれないと思った。子供みたく気になることは何でも聞くみたいだ。俺はそれを、また子供の人格になってしまったのかと思って京本の方を見遣ったが、京本はただ目をパチパチとさせて、さも当然の如く「そうだよ」と答えた。なんだか少しムキになって田舎、なんて形容をしたのが滑稽に思えて恥ずかしかった。
「田舎だから小さい頃からみんな知り合いなんだよ。この高校に来る人だってほとんどはこの村の人たちだし。同じ学年ともなると知り合いばっかりだよ。それが嫌になる時もあるね。単純に東京の不干渉な感じが羨ましくなっただけ。悪く思うなよ」
「そういうこと。別に東京だから名字で呼ぶ、とかはないよ。関わりが少なかったら名字で呼ぶだろうし仲が良かったら下の名前でだって呼ぶだろうよ」
「北斗は下の名前で呼び合うような友達がいたの？」
「それは…どうだろう」
そこで俺は東京にいた頃の自分のことを思い返してみた。
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作者名：とほほ〜 | 作成日時：2023年5月8日 1時
