07. ページ7
買物袋を下げて帰ると、部屋の前に永瀬君が立っていた。
「どうしたの」
r『別に』
ポケットに手をつっこんだまま、静かにこっちを見ている。
「ふふっ(笑)」
r『なによ』
「うぅん。入るでしょ？」
r『うん』
買ってきたボトルを開けながら、
「珈琲いる？」
って聞くと。
r『冷たいのがいい』
って言う声が、すぐ近くで聞こえて。
背中に、体温が伝わった。
「どうしたの(笑)」
r『断られてばっかだったし』
「………、」
r『飽きたのかなーって』
「永瀬君、モテるでしょ」
r『え？まぁ、そうね』
「あたしじゃなく、」
腰に回ってた手が、口を塞いだ。
r『うるさい』
グラスに入れた氷が、シュルシュルと変な音をだして。
ゆっくりと溶けていく。
手を離すと、肩に手を回して。
r『ごめんなさい』
首に、柔らかく噛みついた。
「ね、まって、」
r『なんで？』
「見えるから、やめて？」
ふって、鼻で笑うと。
r『いいじゃん。別に』
って。また、口をあてた。
r『何の匂い？』
「え？」
r『違う匂いがする』
彼を。
二宮さんの存在を。
何て説明すればいいんだろう。
そもそも。
永瀬君は、恋人ではない。
話しても、誰にも責められないし、
隠す必要もないのに。
「何の……匂いかな、」
r『ボディソープ変えた？』
「うぅん、」
r『ねえ。シャワー行こ。お風呂でしたい』
どうしてだろう。
彼を、すきなワケでもないのに。
当然のように、こんなコトができる。
断ることは、できるのに。
それをしない自分がいる。
ー声がほしいー
二宮さんが言った、あの言葉。
あれは、どうゆう意味なんだろう。
ワンピースのボタンを外す、永瀬君の手元を。
ぼんやりながめた
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作者名：とあ | 作成日時：2019年5月7日 19時
