31話 ページ1
雛は傷を治してくれた入間へと擦り寄り、そのまま入間を咥え背中に乗せて飛び立った。
子供が行く場所もいえば、親…つまりは金剪の長がいる場所だろう。この様子では、入間に危害を加えそうではない。
それに子供は入間に感謝を抱いている。つまりは殺される心配はないということだ。
｢…取り敢えず、まずは話し掛けるかあ｣
岩場を蹴り、また空中へと身体を投げる。
そのまま飛んでいる雛と併走し、入間へ話をかけた。
｢金剪の長の子供ちゃん、ちょっと失礼するね。…ごめんね入間くん、飛行試験って言うのが遅くて。怖い思いさせちゃったよね｣
｢え？！A先生！？あ、えっと、最初は確かに怖かったんですけど、何も無かったですし…！そんなに先生が申し訳なさそうな顔をしないで下さい！｣
｢入間くんいい子すぎるよ〜〜〜も〜〜〜〜｣
腕をぐるぐると回し、元気なのをアピールしてくる入間。全て責任を感じているAを安心させる為の行動で、それを感じとったAは入間の優しさに胸を打たれていた。
｢それにしても、金剪の長の子供まで懐柔するなんてね〜｣
｢え？！そうなんですか？！｣
｢え？！知らないで懐柔してたの？！｣
入間くんの魅力、怖すぎるだろ………悪魔以上に悪魔の素質あるぞ……
そ、そうなんだ…と驚き雛の毛を撫でる。それが嬉しいのかギィギィと楽しそうに鳴く子供。
｢この調子じゃ、私が居なくても大丈夫そうかな。多分この雛ちゃん…それか長が到着地点まで届けてくれるだろうし｣
｢え、僕今から長の所に行くんですか…？｣
｢子供が帰る場所は親のいる所だろうからねえ…金剪の長の気が立ってたのは多分この子が怪我しちゃってたからだろうし、もう普段の長に戻ってるはずだよ｣
｢そうだったんですね…なら、よかったねえ｣
まるで自分のことのように喜び笑う入間。
この子の優しさは、少しだけ…いやこの悪魔の世界では厳しいものとなってくる。
サリバン理事長がAを入間のサポートにさせたのはここが大きな原因。
入間は優しすぎるのだ。それを自覚させるのが私の仕事なのだろう
｢…入間くん｣
｢？どうしかし…っ！｣
突然下を向いた入間が雛の背中から飛び降りた。
それに驚き、入間の姿を追うと一拍反応に遅れたAは思わず舌打ちをする。
｢ッくそ｣
私は、こういう所が悪いのだ
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作者名：野崎 | 作成日時：2020年1月31日 4時
