126 ページ27
.
時間は数時間前まで遡る。
俺はAとドーラを見送った後、Ｕ国の外交官と会話を続けていた。
彼もまた外交官だからか、中々隙を見せることはない。
こちらからも武器の情報がききだせればと、自分の知識と技術を全て行使しているが、これといった情報は漏らしてはくれなかった。
彼とようやく話が終わり、俺はアンネスと壁まで捌ける。
｢お疲れ様でした。…やはり、中々手強い相手でしたね｣
｢そうやな。…くそ、Aちゃん大丈夫かな｣
｢流石に心配ですね｣
彼女はちらりと、ターゲットたちが出ていった扉を見やる。
確かに、作戦通りではあるが、仕掛けてきたのは向こう側からだ。
明らかに上手くいきすぎている作戦に、俺は違和感しか感じなかった。
そして、この状況下に置かれたことで、俺は確信を得た。
_______俺達の中に、裏切り者なるスパイがいる、ということに。
｢アンネス、ちょっと外出よか｣
｢しかし、外には見張りが｣
｢……｣
俺は彼女を連れ出して会場の外に出る。
彼女は俺の補佐官だ。見た目はとても美人で、今も着飾った彼女は俺でさえ惹かれてしまう。
その容貌にそぐわず、彼女は俺の仕事を完璧にこなし、時には共に外交相手の暗殺もした。
俺は彼女を信頼していた。数年間培った関係は、そこまで簡単に崩れるものではないと思っていた_____のに。
｢アンネスさぁ、スパイ？｣
彼女はその言葉に、足が止まった。
彼女はわなわなと震え、口元に手を当てる。
わざとらしい、と思いながら俺は冷たい目線をかのじに向けた。
｢そんな………、オスマン様、｣
｢あの作戦を聞いてたんは俺達2人と、A。それプラス幹部の連中……、そんだけや｣
｢だからといって、そんな…、私は、｣
｢Aちゃんの可能性も全然ある。けど、お前も0じゃないねん｣
ここまで一緒に共闘してくれていた彼女を、疑いたくなかった。
しかし一度意識してしまうと、今日の彼女の行動がとても怪しく見えた。
周りの来場者に目配せをしたり、きょろきょろと辺りを見回したり。Ｕ国の外交官に意味のありげな視線を送っていたり___
俺は涙を浮かべる彼女に少し怯んだが、もし裏切り者だとしたら放っておけないと思って言葉の刃を向ける。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1740人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
味噌かつ - Twitterフォローさせていただきました！いつも繰り返し見てます！神作だと思ってます！素晴らしい作品をありがとうございます！ (5月14日 20時) (
レス) @page46 id: ed221277ea (このIDを非表示/違反報告)
柚(プロフ) - 柊木さん» ありがとうございます..！！そうおっしゃって頂けて嬉しいです(TT)良かったです！もっと考察出来るような深い作品に出来れば良かったのですが、自分の技量ではそうもいかず、、今後もそうおっしゃって頂けるよう頑張ります！！ (2021年3月13日 9時) (レス) id: 9eb6eeed7a (このIDを非表示/違反報告)
柚(プロフ) - 白夜ちんさん» いや、彼らをそう仕立て上げた裏の支配者は私です・・・(？)是非そうしてやってください！！ (2021年3月13日 9時) (レス) id: 9eb6eeed7a (このIDを非表示/違反報告)
柊木(プロフ) - すごく考察に入りたいレベルで好きです…。勝手にスパイの目星をつけて楽しんでます！ 本当に面白くて好きです！ (2021年3月12日 0時) (レス) id: 98823b925f (このIDを非表示/違反報告)
私猫(プロフ) - 夢主ちゃん？！？！ (2021年3月11日 14時) (レス) id: a5b5a226ba (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柚
| 作成日時：2021年3月3日 11時
