215 ページ16
｢いっ………！！おい、何を……｣
｢終わりました。でもまだじっとしててくださいね｣
｢……は、？いや、俺は…もう……｣
彼は痛みに顔を歪めたが、まるで何がなんだか分からない様子で私を見る。
私はビッと包帯を伸ばし、患部にガーゼを3枚程重ねてからぐるぐると腹部に巻き出した。
｢………お前を殺そうとしたのに……助けるのか、俺を｣
｢……頼まれたんで｣
｢はっ。じゃあ、俺は鬱に助けられたって訳か。癪だな｣
彼は薄く笑って、全身の力を抜くようにして天井を見る。
すると、突然部屋の窓がバリンと派手な音をたてて割れたかと思えば、そこにはお馴染みの赤いマフラーを巻いたトントンが服にガラスの破片を纏いながら身一つで立っていた。
｢グルさん！！！！…………って、オイ！大丈夫か！！？？？！｣
｢トン氏………………もうちょい早く来てくれ｣
｢すっ、すまん……、薬がめっちゃ効いて制御しきれんくって…って、大丈夫……なん？｣
彼は心配そうに私の顔を覗き込んだ。
私は彼に頷くと、彼はホッとした様子でグルッペンの傍にしゃがむ。
包帯を巻き終わり、ぽんぽんと傷口を叩くと彼は再び顔を歪める。
｢おい！わざとやってんだろ！！｣
｢まさか。多分今治ってる途中なんで大丈夫ですよ｣
｢グルさんのことやからまさかなとは思ったけど、ほんまに死ぬ気やったとはな。Aさんがおらんかったら死んでたで｣
｢……………うるせぇ｣
私が死ぬ気で開発したiPS細胞は、人工多能性幹細胞で血液や皮膚などの細胞を生み出すことが出来る。以前、トントンの負傷時に弾丸を受けても回復するような薬があればと言われてから、ずっと開発し続けてきた新薬だ。なんの偶然か、それはこの作戦実行日の前日に完成した。
iPS細胞で回復しているとはいえ、彼がここまで喋れるのは驚いた。
止血剤が効いてきたのか、血も段々止まっているようで、包帯に血が滲まなくなった。
｢あの二人は死んだん？｣
｢俺は一発しか撃ってねぇから女は生きてる｣
床に横たわる2人を見やると、男は白目を向いて心臓辺りから今も尚血が流れ出ている。ドーラは睡眠ガスの効果で眠っているようで、小さく寝息が聞こえた。彼女は意識を失う手前、彼の身を案じたのか、手が彼の体に伸ばされている。
トントンは彼女に近寄り、手足を紐で縛った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2438人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あまね(プロフ) - 完結！おめでとうでふ！ (10月29日 11時) (
レス) @page27 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
パリラ - 凄いですね、、、もう本当に好き過ぎて一日で読み切りました！ (8月30日 10時) (レス) @page27 id: 326cf2b718 (このIDを非表示/違反報告)
砂糖 - これめっちゃ前に見てそれからずっと探してたんですけどやっと見つけて徹夜で読みました、、！！スリルがあって何より菊さんが好きすぎて！！最高でした！！素敵な作品をありがとうございます！ (2022年5月4日 4時) (レス) @page27 id: 1132857e69 (このIDを非表示/違反報告)
輝月(プロフ) - 久しぶりに占ツクに戻ってきたら好みの作品見つけて一気に読んでしまいました！これは今後がとっても気になります！素敵な小説をありがとうございます！ (2021年7月22日 21時) (レス) id: 4cc550c3ab (このIDを非表示/違反報告)
アリス(プロフ) - みちゃくちゃ好きな作品！！！！完結？おめでとうございます！！オチ…みたいけどTwitterやってねぇ…！！ｸｿｩ…他の作品でも頑張って下さい… (2021年6月25日 22時) (レス) id: 5459160ee1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柚
| 作成日時：2021年3月23日 9時
