好感度爆上げする方法を急募しています【d!】

▽ ページ11

｢先日入城させていただいた、Aと申します。まだまだ分からないことばかりですが、精一杯皆様のお力添えになれるよう精進いたします。｣
｢トントンです。一応ここの書記長やらせてもらっとんで、なんかやばいことやってしもうたら俺に言ってくれたらええかなと思います｣


彼はへらりと笑みを浮かべたが、その瞳の奥は酷く濁っている。目の下にも隈ができており、顔色もどこなく悪い気がした。
近くで見るとより疲労の色が見えたので、相当社畜なのだなと内心憐れんだ。


｢仕事、慣れたん？｣
｢あー…いや、まだまだですね。まだご迷惑をおかけしてばっかりで｣


苦笑いを浮かべてそう言うと、ふと頭上に浮かんでいる数値が動く。
え、と思って思わず目線だけを頭上に向けると、数値がスライドしながら数字を変化させた。

ーーーーーーはあ！？！？


｢……？どうしたん？なんかおる？｣
｢あっ、や、いや……なんでもないです、すみません。仕事に戻ります｣
｢お、おん。じゃ頼むわ｣
｢あ、そうだトントンさん。これ…｣


いや、下がったんだけど。

赤いハートだったものが青いハートに変わり、10の数値がマイナス5に切り替わった。
明らかに好感度が下がりましたよの合図で顔が青ざめる。
あの青いハートには見覚えがあるし、若干トラウマだ。青いハートを浮かべた男に射殺されたという記憶は根強く、一生忘れられそうもない。

自席に戻って彼の方に目線を移しても、変わらない青いハートが彼の頭上に浮かんでいる。
盛大にため息をつきそうだったので、代わりに頭を抱えた。隣に座る同僚に心配されたが、返答する余裕もなく死んだような目ででデスクトップに向き直った。




.


入城、13日目。

財務関係の仕事に就いてから1週間と6日が経とうとしていた。
あれからトントンと名乗った男は見ていないし、特に代わり映えしない日々が続いている。
平穏な生活が送れるならそれで良かった。
青いハートになったら殺されるのかと思えばそうでも無いらしいし、法則がよく分からないがとにかくなんとかなっているので、このまま何も起こさず生を終えたい。

現実に戻る手段なんて、あったら帰ってる。
しかし、何事もなく生活出来ているのでこのままでも別に悪くは無いなと割り切った。

頭上にハートの浮かんだ人間がいるというおかしな世界だが、関わらなければ問題ないだろう。

ーーーと、今日も今日とてパソコンを開いたその時だった。

▽→←▽

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す