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バキッと嫌な音がする。
恐らく骨折はしていないだろうが、それでも関節をやられたのか力なく体が地面に倒れた。

彼はふわりと、首に巻いた赤いマフラーを風に靡かせている。
以前見せた優しい顔のまま、ぎらりと赤い瞳をこちらに向けていた。



「………トントンさん」




彼は足元に横たわる数人の体を避け、こちらに歩み寄ってくる。

今回の出来事の引き金となったであろう彼。
短期間だけだったが、一緒にご飯を食べたり話したりする時は優しく、温厚な人だと思ったのに、戦い方を見ると酷く残虐で容赦ない。
数人はありえない方向に腕や足が曲がっている。
その光景に少しだけ彼に殺意を覚え、彼に向けたこともないような眼差しを送る。





「Aさん。俺、手荒な真似したないから、大人しく来て欲しいな」
「一体何が目的なんですか?私達を…、国に宣戦布告してまで、何故」
「詳しい話は後でしてくれるはずや。やから、今は大人しく俺の言うこと聞いてほしい」
「いっ……!!」



身構えていた私の手を掴む。
反射神経が鈍くなったのか、掴まれることに咄嗟に反応出来なかった。
その手を振り払おうとして力を込めるが、彼の手はビクともしない。

先程の力はどうしたのか、何故、____と思った矢先、気付けば先程より音も聞こえず足取りも重かった。

ああ、効果が切れてしまったんだ。
薬の効果が切れた私は、ただの研究員である。警戒されている今、男性の彼に勝てるはずもなく意気消沈して脱力する。



「…聞きたい話は山ほどあるんで。とりあえず、抵抗出来んように…、手錠はそのままで。」




ジャラ、と手錠の鎖が揺れる。

手を繋ぐようにして私の手を取り、正門に向かった。
こんなことになるなら、最初から逃亡など考えなければ良かった。

後ろを振り返ると、見知った顔の研究員たちが無惨に倒れている。



「……こちらトントン。チーノ、裏口に転がってる数名の保護を頼む」
「はーい」
「怪我してるから、救護室にな」
「はーい」



…いや、怪我させたの自分じゃないか。
手を引かれながら、心の中でそう思う。

コツコツと革靴の音と、自分の履いているヒールの低いパンプスの音がエントランスに響いている。




「………………俺の事、嫌いになりました、よね」
「…まあ、あそこまでやられてしまったし」
「…………やっぱ、そうよなぁ」

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宇琉夜ハル(プロフ) - 後 side ほしいです (2021年4月30日 19時) (レス) id: c64b9591b6 (このIDを非表示/違反報告)
宇琉夜ハル(プロフ) - 後名前がわかったら zm「あ」 見たいなん欲しいです (2021年4月30日 19時) (レス) id: c64b9591b6 (このIDを非表示/違反報告)
宇琉夜ハル(プロフ) - 出来れば夢主のセリフ『』こうしてください 時間があればでいいんで (2021年4月30日 18時) (レス) id: c64b9591b6 (このIDを非表示/違反報告)
叶子(プロフ) - 晴さん» それは良かったです!!ありがとうございます!めちゃくちゃ遅れましたが見てますよ!!!頑張ります!!! (2021年2月21日 20時) (レス) id: 9eb6eeed7a (このIDを非表示/違反報告)
叶子(プロフ) - 通りすがりの亀さん» 最初はその予定でしたが、主人公が後悔することのないようにヘイトを向けさせて上層部をクズに仕立てあげました(^^ ありがとうございます!頑張ります!!! (2021年2月20日 21時) (レス) id: 9eb6eeed7a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年1月31日 9時

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