醜い少年の話【ヒロアカ】 (ページ9)

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Story.9 ページ9

ヒーローは嫌いだ。
もちろん、さっき話していた相澤だって、本物のヒーローで、俺が嫌う存在。

……ああ、何でさっきは話しかけるなんて馬鹿なことをしたのだろう、と過去の自分に嫌悪感を抱く。

そうだ、何を見間違えていたのだろう。
あいつも、ヒーローではないか。

ガシャン、と重力に従うように丸椅子へと座り込む。話す気力すら、湧かなくなった。

「何度も言うが、君には雄英高校のヒーロー科に通ってもらう。入試等は一切パスだ___ただ君は、個性の制御をする為だけに通えば良い。

生徒達と、教師達と何も会話を交わせ、交流を深めろとは言っていない。

____君に拒否権は無い」

また、それか。
自由は無いのか、俺に。

きっとこいつらは、ただの不良の喧嘩なら無視していた。通報したやつだって、きっとそうだ。

俺の個性が、醜い(・・)から、不気味(・・・)だから、怖い(・・)から。

そうやって、縛り付けて、行動を制限して、被害を受けないように逃げて行く。

……抵抗するのも、面倒臭い。
スーツ野郎は、俺の返事を待っている。

だから俺は「分かった」と、呟くように返す。
相手から見て俺は何に見えているのだろうか。

”怪物”か、”化け物”か、”醜い何か”か。
人にはきっと見えていない。

こいつらは、化け物を押さえつけるためにここにいる。何一つ俺のことを、俺の身を案じている訳では無いのだ。

そう、そもそもそれだったのだ。

俺という存在が怖いから、政府は俺を監視することにした。

俺という存在が怖いから、政府は俺を制御する装置を開発した。

俺という存在が怖いから、政府は俺の個性を幾度も幾度も調べ続けた。

ここにきっと、”可哀想だから”という感情はない。
ただ単に、”国に害をなす恐れがあるから”という理由だけだ。

敵(ヴィラン)になって面倒な事を起こされたら適わないからだ。

何を勘違いしていたのか、と乾いた笑みを浮かべる。自分で自分を嘲笑うように。

馬鹿みたいな勘違いをして、馬鹿みたいに悲しむ羽目になるのは自分だ。自分で自分を苦しめてどうする。

個性を制御しても、きっと俺は”化け物”に変わりはない。勘違いにも程がある。

この個性がある限り、俺はずっと”怪物”で、”醜い何か”だ。

もし俺が制御出来るようになって、思うがままに暴れて、それこそ敵(ヴィラン)のようになってしまえば、こいつらはどんな絶望の色に染まるのだろうか。

ああ、考えるのも面倒臭い。