uno ページ3
｢はて、これからどうしたものやら。｣
見知らぬ土地。聞き慣れない言語。
これでは目的地に着くどころか街を歩くのも怪しい。
歴史、芸術、文化の国。イタリア。
世界遺産の数は世界一。世界有数の観光大国。
｢観光で来たかった…｣
しかし、何としてでも父を見つけなければ。もう日本に私の居場所はないと言っても過言では無い。これは私の今後の生活が懸かった大事な旅なのだ。
まず目指すは“ディスティーノ”。
父と母の出会った街。
｢…ﾌｰ……よし、
道案内を頼むために通りがかりの人に話し掛ける。イタリア語は全く分からないので英語で。果たしてカタコトの英語が通じるのかは怪しいが。
｢い、
｢OK. なにかお困りかい？｣
運良く、男性は英語が喋れる人で嫌な顔一つせず応じてくれた。流石、フレンドリー。道案内も快く引き受けてくれた。
｢それで、何処に行きたいんだ？｣
｢ディスティーノ｣
｢なんだって？｣
ディスティーノ、ともう一度言うと男性は急に顔を顰める。
｢悪いがそれは出来ない｣
｢え？｣
｢お嬢ちゃん、観光客かい？
あそこに近付くのは良くない。やめときな｣
どうしてもと言うなら他を当たれと、男性は行ってしまった。
その後も何人かに話しかけてみたけれど、“ディスティーノ”の名を出すと皆一様に首を振ふるのだ。
｢そんなぁ…｣
ガックリと肩を落とす。これはもう自力で行くしかないのだろうか。
｢お困りのようだね、お嬢さん｣
日本語だ。
聞こえた懐かしい母国語に振り向くと、そこには深くフードを被った青年が。性別は不明。
｢日本語が話せる？｣
｢まぁね｣
｢それはそうと、何か困ってるみたいだけど｣
あったことを話した。すると青年はなるほど、と言ってこちらに向き直った。
｢良ければ僕が案内してあげようか｣
｢いいんですか！？｣
｢勿論、タダじゃあ無いけどね｣
まぁ初回価格で多少は安くしてあげる。
このままじゃあ進まないし、仕方ないという思いで財布を取り出した。
｢交渉成立ね。さ、着いてきて｣
すっかり軽くなってしまった財布を泣く泣くポケットに入れ青年の後を追う。
｢…ん？｣
前を行く青年の姿が一瞬、宙に浮かぶ赤ん坊に見えた気がして目を瞬く。しかし、そこには変わらず、青年の背中が。
疲れているのか。
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作者名：野次 | 作成日時：2019年4月1日 13時
